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1997年05月07日

電気通信大学教職員組合、 大学の教員の任期に関する法律案の廃案を求める(声明)

大学の教員の任期に関する法律案の廃案を求める(声明)

 大学の教員等の任期に関する法律案(以後「教員任期制法案」と略す)の国会審議が5月9日に始まろうとしています。この「教員任期制法案」は昨年10月29日に文部大臣の諮問機関である大学審議会(石川忠雄会長)が出した答申を受けて文部省が作り、去る4月8日の閣議で決定された後、国会に提出されました。
1.大学審議会の分析と提言について
 大学審議会は「大学における教育研究の活性化」についての答申の中で、大学の現状を「我が国の大学については、幅広い教養と専門知識を有する人材の要請や学術研究の推進を通じて、社会経済の発展に寄与してきたとの評価がある。」と評価しています。
 しかし他方、「学生のニーズや社会の要請を踏まえた教育が行われていない。国際的な競争に耐え得る水準の研究成果があがっていないなどの厳しい批判がある。」と分析しています。
 そして「これらの批判にこたえ、多様な課題に対応していくためには、大学改革を進め、大学における教育研究の活性化を推進することが喫緊の課題である。」
 さらに「大学設置基準の大綱化、制度の弾力化、教育機能強化のためのシラバスの作成や学生による授業評価の実施、大学院の拡充による教育研究の高度化、大学運営の円滑化、教育研究環境の整備充実等について、幅広い提言を行ってきた。」と述べています。
 文部省は1991年の「大学設置基準の大綱化」以来、大学審議会の提言や答申に基づいて大学を指導し、各大学もそれを受けて努力しつつあるのが今の現状です。
また、大学審議会は「教員の流動性を高める取り組みの現状」のなかで、「教員の流動性の向上に関して」は、
・教員採用については「学外の専門家の積極的登用」「公募性の活用」などにより改善が図られつつある
・弾力的な教育研究組織・体制の工夫では、「大講座化の進展」「客員ポスト等の整備」「弾力的な組織の編成」などが実施されつつある
・期間を限って教育研究に携わる者の増加として、「ポスト・ドクトラル・フェローシップの整備」「期間を区切った教育研究の実施」がなされている
と述べています。
 このように大学審議会は各大学の努力を評価しています。
2.大学審議会は恣意的に「教員の任期制」を導入しようとしている?
 大学審議会は、上記のように評価をしているにも関わらず、同じ答申のなかで我が国の大学教員の人事について、「大学や学問分野によっては」と断りながら、「自校出身者の比率が高く、他校等との人材交流も乏しい」「同質者の間ではとかく発想が似通ったものとなり」「相互の批判や競争の機会も少なくなり、教育研究が低調になりがちである」「若手教員については、人事の停滞等の影響もり、長期にわたって特定の教授等の研究テーマ・方針などに拘束されて、その柔軟な発想を教育研究に生かすことが困難な状況も指摘されている」と述べ、だから教員の流動性を高めなければならないとしています。
 さらに答申は結論的に「そのための一方策として、大学教員に任期制を導入できるようにすることは、国内外を問わず、他の大学や研究機関等との人材交流を一層促進することになり、教員自身の能力を高め、大学における教育研究の活性化を図る上で、極めて大きな意義を持つものである」と述べています。
 これは部分的な実情を故意に強調して、全体がそうであるように印象づけるものです。
 大学設置基準の大綱化以来、各大学では「大学の個性化・多様化」を追及しつつあります。これはまさに、「大学の教育研究の活性化」の追及です。したがって、「活性化」のために「任期制」を導入するという結論の出し方は恣意的というものでしょう。
3.大学教員は「学問的交流」を内外で活発に行っている!
 「教員任期制の法案」の(目的)や法案提出の「理由」には「大学等において多様な知識又は経験を有する教員等相互の学問的交流が不断に行われる状況を創出することが大学等における教育研究の活性化にとって重要である」と書かれています。
 しかし、現在、国公私立を問わず大学では「学問的交流」は活発に行われています。大多数の大学教員が参加している各種学会では、多くの企業の研究者が参加し共同研究や情報交換が活発に行われています。また、国際学会への参加(発表および学会の運営)も毎年活発に行われています。
 このような実態を文部省は知っている筈です。
 それでも大学の教育研究が停滞オていると文部省が云うのであれば、その原因は劣悪な教育研究条件(長年にわたる高等教育財政支出の低下、無謀な教職員定数削減、教育研究室の不足、施設設備の劣化等)にあります。
4.「教員任期制法案」は「教員の解雇法案」である!
 「教員任期制法案」の第2条、第4項で大学教員の任期は「当該期間の満了により退職することとなるものをいう」と定めています。
 この事は、たとえ再任が決まっても一度は解雇されることを意味します。任期が来るたびに解雇されるような大学へ優秀な若手研究者が来るでしょうか?
 さらに現職の教員が積極的に他大学へ流動するでしょうか?
 したがって、「教員任期制法案」は「大学の教育研究の活性化」に繋がらないことが明らかです。
5.「教員任期制法案」は全公務員、全労働者の「任期制」適用に道を開くものである!
 文部省は「教員任期制法案」を上程するにあたって教員の解雇を可能にするために対象となる法律、国家公務員法、教育公務員特例法、人事院規則、労働基準法などを変えなければなりません。たとえ「特別法」の形式をとるにしても、一般公務員、民間の労働者に対して「1年を越えて期間を限る」契約が出来るようになります。これは労働基準法14条に違反し、全労働者のパート化を可能とするものです。
 よって我々は、教育研究の活性化を阻害し、全労働者のパート化に道を開く「大学の教員の任期に関する法律案」の廃案を強く求め、ここに声明します。
1997年5月7日       

 電気通信大学教職員組合執行委員会


Posted by 管理者 : 掲載日時 1997年05月07日 12:17 | コメント (0) | トラックバック (0)
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