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掲載事項(記事)一覧

2006/11/03 九州大学教職員組合、声明「助教任用に伴う事実上の任期制強要に反対する」
2006/07/09 九州大学教職員組合、教員の任期制について(要求書)
2006/06/23 九州大学教職員組合、新助手・助教への任期制導入に関する質問書
2006/05/15 九州大学教職員組合、新助手・助教への任期制導入に反対します
2004/07/31 九州大教職員組合、声明「改めて任期制の廃止を求める」
2003/05/15 九大教職員組合、「工学研究院における任期制同意書不提出者に対する差別を撤回させました」
2003/05/06 九大教職員組合、「工学研究院における任期制同意書不提出者に対する差別待遇問題」
2003/04/15 九州大学教職員組合、「議論しよう.連帯しよう -任期制問題についての中間総括-」
2003/04/14 九州大の理工系教官、半数強を任期制に
2003/03/06 九州大学教職員組合、任期制「同意書」の提出にあたって法的問題と学長交渉での確認
2003/02/14 九州大学教職員組合、適法性を欠く農学・工学両研究院の任期制導入を九州大学として承認しないよう求める申し入れ
2003/01/07 九州大学教職員組合、農学研究院と工学研究院における任期制導入をめぐって
2003/01/03 <九州大>助手以上の全教員対象に任期制導入を検討
2002/12/26 九州大学全部局・全教員への任期制一律導入反対の申し入れ
2002/12/03 九州大学における任期制導入についての諸問題
2002/01/18 九州大学教職員組合、教官の任期制導入についての申し入れ書
1996/03/14 大学教員任期制=クビキリ制に反対する声明

2006年11月03日

九州大学教職員組合、声明「助教任用に伴う事実上の任期制強要に反対する」

助教任用に伴う事実上の任期制強要に反対する
助教の資格のある現助手が任期不同意で「准助教」にされることは許されない

2006年11月2日
九州大学教職員組合

 学校教育法の改正により2007年4月から施行される「新しい教員組織」における助手の移行について、10月時点で検討されている大学側の案は、①任期付きの助教、②助教にならなかった者及び任期付きに同意しなかった者が就く准助教(仮称、職務処遇は現助手と同等)、③新制度化において新たに採用される助手、となっています(以上、助教に任期制を導入する部局の場合)。組合は、10月12 日の第2 回目の団体交渉の際に示された上記の案に反対の意を表明し、これまでの経過と改めて新制度への移行についての見解を示すものです。

職務実態に合わせた位置付けが学校教育法の改正趣旨です。

 学校教育法の改正趣旨は、教育研究の活性化の観点からの教員組織整備、特に、現助手について、職務実態に合わせた位置付けを行うものです。改正に伴う国会付帯決議では、教育研究水準の維持・向上のための若手研究者の教育研究の機会・環境の整備について特段の配慮がされるべきとされ、助教と新助手の任用に際しては、能力・業績を公正・適切に評価することとされています。本学の現助手の実態は大学側が行ったアンケートにもあるように、そのほとんどが助教に相応しいものです。学校教育法の改正趣旨に照らせば、新制度への移行によって、本人の自由意思によらない実質的な教育研究条件の悪化や身分の不安定化はあってはならないものです。

任期制の全学一律導入は教育研究の活性化に逆行します。

  4 月に示された大学側の当初の案は、「助教は任期を定めて雇用」とし、任期制の全学一律導入を包含するものでした。これについては、少なくない部局から、反対・慎重意見が寄せられ、「導入にあたっては各部局の判断」との回答がなされました。任期制はその是非は別として、教育研究の活性化が大義名分とされ、導入にあたっては各分野の実情や特性に応じて判断されなければなりません。その適正な判断なしに導入されるとすれば、「学生を教授し、その研究を指導し、又は研究に従事する」教育研究者としての職務に支障が生じかねません。今回に限らず、今後、任期制の全学一律導入などということが検討の俎上に載ること自体、教育研究機関である大学においては、厳に慎むべきものです。

新制度への移行は任期制の拡大が目的ではありません。

 9月1日に行われた第1回目の団体交渉で大学側は、「助教に任期制を導入する部局においては、任期付きに同意しない助手は助教ポストに就くことができないため、新助手となる」という回答とあわせて、現助手と新助手とは等価な職であり不利益とはならないという主張を譲ることはありませんでした。この主張は、学校教育法の改正趣旨及び労働法規等に反するものであり、その理由はここで示すまでもなく明瞭です。その後、10 月12 日の第2 回目の団体交渉で大学側は、決して譲る姿勢を見せなかったこの主張を撤回し、現助手と等価な職として「准助教」なる職を組合に示しました。このような大学側の姿勢に対しては、学校教育法の改正による新制度への移行を機に、学校教育法に明記されていない准助教という職をつくってまで、任期なしの助手を任期付きにしようとしているとしか考えられません。

「准助教」は社会的に認知されていません。

 「准助教」なる職は、職務処遇について現助手と同等とし、単位認定権の有無で助教と区別されています。現助手のうち、教育研究を主たる職務としない者及び助教に任期制を導入する部局で任期付きに同意しない者は、「准助教」に就くことになります。大学側は、この「准助教」により、任期付きに同意しない現助手が新助手となる場合の不利益変更の問題をクリアできると主張しています。しかし、「准助教」なる職は学校教育法に規定されておらず、当然のことながら社会的にも認知されていません。研究資金の獲得や他大学の公募に際し不利益とならない保証はありません。実態として助教となるに相応しい職務を行っている現助手にとっては、これまでと同様に教育研究に従事しそれが明確に位置付けられるためには任期付きを受け入れなければならない、一方、任期付きを拒めば社会的な不利益を覚悟しなければならないことになります。つまり、助教となるべき資質・資格を有する現助手にとって、資質・資格とは無関係な任期という要素により、職の選択が制限されるということになります。

以上の内容を踏まえ、組合は、学校教育法の改正に伴う現助手の新制度への移行については、少なくとも以下の点が確保されなければならないものと考えます。

● 任期制を導入する部局における助教への移行にあたっては、その者が助教の職に相応しいか否かを公正な選考基準により行い、任期付きへの同意を前提としないこと。
● 任期制を導入する部局において、上記の内容が容認されない場合でも、公正な助教選考基準を満たせば、任期なしの現助手を任期なしの助教とすること。


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2006年07月09日

九州大学教職員組合、教員の任期制について(要求書)

九州大学教職員組合
 ∟●教員の任期制について(要求書)

九州大学総長 梶 山 千 里 殿

九州大学教職員組合執行委員長
高 木 彰 彦(公印省略)

教員の任期制について(要求書

 平成19年4月から学校教育法の改正に伴い、教員が教授、準教授、講師、助教及び助手となります。これらの新たな職への変更、殊に助手の助教への変更にあたっては、学校教育法の趣旨に従い、その者の教育研究の能力・資質が助教の職として相応しいか否かを基準に公平に且つ適切な選考が行われなければなりません。

 ところが貴職は、公平・適切に選考すべきところを、任期制促進の意図を持って「任期制への同意」を助教選考の前提条件とすることを検討しています。このことがまかり通れば、任期制が導入されている部局の助手にあっては、①再任制限のついた助教か、②新助手になるのかの2つのうちいずれかに進む以外にありません。第三の道の③任期が付いていない助教に選考されることは一方的に閉ざされています。このことは、①に進めば、現在の任期制は、数理・医学研究院を除いて殆どが再任制限のないものであり、現に任期制に同意している助手にとっては、再任制限付き任期制への労働契約の不利益変更であります。また、任期制に同意していない助手にとっては、任期を付されること自体が不利益変更となります。②に進めば、授業・研究の補助業務を職務とする者となり、これもまた現在の助手の職務の位置付けからの後退となります。いずれにしても現在の労働契約の一方的不利益変更となり、法的にも信義則からも許されないことです。

 私たちは、任期制の一方的促進が助手の雇用を不安定にするにとどまらず、本学の教育研究の将来を左右する問題として、全学教職員、殊に不利益をこうむることになる助手への十分な説明と合意により進めることを求め、並びに本組合との団体交渉により決すべきものとして、下記の要求について団体交渉を申し入れるものです。

……以下,略。


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2006年06月23日

九州大学教職員組合、新助手・助教への任期制導入に関する質問書

九州大学教職員組合
 ∟●新助手・助教への任期制導入に関する質問書

九州大学総長
梶 山 千 里 殿

九州大学教職員組合執行委員長
高 木 彰 彦(公印省略)

新助手・助教への任期制導入に関する質問書

 2007年4月から施行される改正学校教育法により、助教の新設と助手の見直しがなされようとしています。改正学校教育法は、助教の職務を「学生を教授し、その研究を指導し、又は研究に従事する」とし研究教育職として助手を位置づけ直すものであり、評価できるものです。

 しかしこの助教の制度化にあたり、貴職は、助教に一律に、しかも再任制限を設けた任期をつけようと検討されています。今回の学校教育法改正による教員組織変更では、何ら任期制には言及しておらず、助教を任期制とするのは九大独自の方針であります。今回の「九州大学の新しい教員組織案について(以下 第1次案)」は、助手の雇用に関わる案件であるにとどまらず、本学の教育研究の将来を大きく左右する問題であり、急激な変革による混乱や困惑を避け、全学教職員の合意と本労働組合との団体交渉によりすすめられるべきものです。

 ついては、要求書提出に先立ち、下記の質問事項に6月30日までに回答されますよう申し入れるものです。

1.第一次案から、いかなる手続きと日程を経て、九大の新しい教員組織のあり方が決定されるのですか。また、決定までの過程において、教員、特に助手が意見を充分に表明できる時間的余裕が保障され、それらの意見が尊重されるべきと考えますが、そのような措置がなされるのでしょうか。
2.助手の助教・新助手への選考は、誰がいかなる基準をもって、どのようなスケジュールで行う予定でしょうか。
3.今回の助教への任期制は、各部局の事情を斟酌し、各部局単位で導入するか否かを決定することができるのでしょうか。それとも、九大全学一斉に助教に任期制を導入するのでしょうか。
4.今回の第1次案の検討の観点に「教育研究の高度化・活性化」を第一にあげていますが、助教への任期制の導入は、助教の教育研究活動に時間的制約が加わり、中・長期的な学生・院生への教育カリキュラムが立てられなくなるなど、教育研究の活性化どころか教育研究に新たな障害をもたらすものではないかと懸念されます。再任制限を設けた任期制を導入することが、教育研究の高度化・活性化をもたらすとする根拠を具体的に明らかにしてください。
5.助教は、准教授・教授につながるキャリアパスの出発点と位置づけ、新たな任期制を導入しようとしていますが、教育研究職の国内での流動化が存在しない現実に照らせば、助教への任期制は雇用を不安定なものにするばかりで、魅力ある職として社会的に認知されないものになると考えられます。優秀な人材は九大を避けるばかりか、優秀な人材が流失することになると危惧されます。助教への再任制限を設けた任期制の導入によって、本学に優秀な人材が集まる理由はどこにあるのでしょうか。
6.現在、任期がついていない助手は、今回助教への変更にあたって、任期についての同意書を新たに提出しない限り一方的に任期付きの助教に変更されることはなく、任期なしの助教の道を選択できると解されますが、この解釈で良いのでしょうか。 また、助手から助教への選考にあたって、同意書を提出しないことによる差別取り扱いは行えないと解して良いのでしょうか。
7.現在、任期がついている助手は、再任制限はしないとの説明で現行任期制に同意した助手が大多数ですが、助教への変更にあたって、再任制限のある助教へ新たな同意書の提出なしに変更することは、法的に問題があり、信義則にも反することです。任期付き助手が、新設された助教になる場合は、本人の意思により任期なしの助教になる道を選ぶことができると考えますが、この解釈でよいのでしょうか。
8.今回の助手が助教になることで、教育研究職としての位置づけが明確になり、職務範囲も広がりその職責も高まることとなります。職務内容の高度化に応じて、給与を始め研究費などの教育研究環境の改善を図るべきと考えますが、そのような検討はなされているのでしょうか。


Posted by 管理者 : 掲載日時 2006年06月23日 00:03 | コメント (0) | トラックバック (0)
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2006年05月15日

九州大学教職員組合、新助手・助教への任期制導入に反対します

九州大学教職員組合
 ∟●新助手・助教への任期制導入に反対します(2006.5.10付)

新助手・助教への任期制導入に反対します

1. 九大の助手は教育研究を支えている教員です。
 九大の助手職は、これまでその高い教育研究能力によって、学生と教授・助教授との間をつなぎ、授業はもちろんのこと、様々なプロジェクトや学内行事で重要な役割を果たしてきました。
 今回、教員組織の変更にあたり、この助手職が廃止されて助教職が新設されようとしています。助教は、昇任可能で独立した教育研究職とて助手を位置づけ直そうというもので、その考え方は大変評価できるものです。
 ところがこの助教職の導入に当たり、九大は助教職に一律に任期を付けようとし、再任についても適切な制限を設けるとしています。今回の教員組織変更は、大学設置基準改定要綱に基づいていますが、そこでは、助教への任期制の導入は言及されておらず、助教を任期制とするのは九大の独自の方針であることが分かります。助手は、無条件に任期付きとなる助教に移行するか、教育研究者とはもはや認められない新たな助手職を選ぶしかありません。助教への移行に伴う審査を含め、再任審査の詳細が全く不明なまま、助手は平成19年度から、任期付きポストへの移行を事実上強制されることになります。
 現行の助手に対するこうした大学の取り扱いは、助手をあまりにも軽視していると組合は考えます。

2. 任期制は助教の趣旨に反します。
 助教の導入理念は、教育研究能力の高い現行の助手職を教授の秘書的業務から解放し、独立した教育研究職として位置づけるところにあります。しかしここに任期制が導入されると、こうした理念の実現は困難になるでしょう。
 任期制は、任命者によって雇用の継続が任意に延長される制度です。つまり再任拒否は通常の労働法上の解雇ですらなく、たんに雇用を継続しないという通告でしかないのです。どれほど業績をあげてもそのときの都合で簡単に首を切ることを法的に実現する制度が、教員任期制なのです。
 助教が再任を期待して、どれほど研究に努力し教育に熱心であったとしても、それが報われる保証はどこにもありません。裁判所は、業績をあげてもなお首を切られたある国立大学教員の地位回復の訴えに対し、その請求を「たんに再任を期待したにすぎない」の一言で退けています。すなわち任期制は、再任の可能性が組織の改変や方針変更により大幅に変化する、業績とは別の評価基準を有しています。任期を越えるスパンの研究や外部との提携を計画することが困難であるばかりでなく、研究を必然的に再任審査に有利な方向に向け、自立して研究を行うより既存のプロジェクトや継続が約束されている研究に従属する立場を取らざるを得ません。どうして教育研究の活性化につながるでしょうか。

 また研究以外でも、再任に影響を与える他の教員との関係が常に意識され、人事権を持つ教員への人格的従属を引き起こしかねません。こうした状況を誘起しうる体制は、助教を自立して教育研究を行う者と位置づける導入理念に反するものであると組合は考えます。

3. 助教任期制は九大への貢献を困難にします。
 今回の助教職の導入には多くの問題が残されています。これまで助手が行ってきた事務作業や教育上の補助、研究プロジェクトの補佐などの仕事を誰が負担するかという問題です。最悪の場合、現行の助手の仕事はそのままに、さらに授業・学生指導という重い責任が助教に課せられることも考えられます。十分な措置がとられないかぎり、助教が研究に割ける時間は現行よりはるかに少なくなる可能性があります。
 しかも助教は再任審査にさらされるので、これまで以上に研究業績を上げることに専心しなければなりません。助教が、再任審査に先立他のポストにも移れるよう、自己の研究以外のあらゆる要素を犠牲にする気風が生じれば、それは、九大にとって大きな損失となります。また、こうした状態は、とりわけ女性研究者の出産・育児をきわめて困難にし、男女共同参画の実現を難しくするでしょう。助教は、大学のために積極的な貢献をしたくとも、困難な状況に追い込まれるでしょう。
 こうした精神状態に現行の助手を追い込むことは、自己の直接的利益を超えて初めて維持される大学ののびやかな活動とその発展を著しく阻害することになると組合は考えます。

4. 現行の助手を任期つきポストに移行することは契約法理の原則に反します。
 任期制は教員を雇用継続に関する無権利状態に追い込むものです。それが一方的に適用されるならば、雇用形態の強制的な変更であり、労働者の持つ基本的権利の侵害に当たると組合は考えます。そもそも期限の定めのない労働契約に合意したはずが、一方的に期限の定めのある労働契約に変えられてしまうという事態になります。こうした変更が許されるならば、社会一般の当然の原則である「契約法理の原則」に反することになります。論理的には、教授・準教授にも、同様の手続きで任期制が導入できることになります。一度この任期制導入の論理を認めれば、次からそれに反対することは著しく困難になるでしょう。
 加えて今回、九大は、助教に一律に、そして再任について制限を設け、任期制を適用しようとしています。大規模総合大学としての九大は、部局独自の実情と特色に合った運営がなされ、それが総体として九大の教育研究の発展につながってきました。一律に任期制を適用しようとするならば、混乱が生じることは明らかでしょう。
 今回の助教に対する任期制の導入は、教育研究者全体が保持する基本的な権利の性格にかかわる重大な問題だと組合は考えます。

5. もう一度任期制について考えてみて下さい。
 大学教員はみな、教育研究に情熱と夢を持ちその道へ進んでいます。教員それぞれが挑戦する意欲を持ち続け、その能力を最大限に発揮し、九大の教育研究が発展していくために、全員でこの問題を考えてみることが大切です。

2006年5月10日
九州大学教職員組合


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2004年07月31日

九州大教職員組合、声明「改めて任期制の廃止を求める」

九州大学教職員組合ホームページ
 ∟●「改めて任期制の廃止を求める」(九大教職組執行委員会声明、2004.7.20付)(7月28日掲載)より転載

改めて任期制の廃止を求める

九州大学教職員組合執行委員会 2004年7月20日

任期制は危険な制度です

九州大学では法人化直前に、工学研究院、農学研究院、医系研究院等に全職種全教員任期制が導入されました。導入の際には各部局において研究院長等から「ほとんどの教員は再任されるから心配しなくてよい」という説明が行われ、同意書がかき集められました。しかし、このような口約束で安心するわけにはいきません。任期制とは期限を定めて(たとえば5年間で)自動的に職員を失職させる制度なのです。任期制においてはその趣旨から言って基本的に再任は前提とされていません。仮に再任された場合でも、いったん失職したのち新規採用という扱いになります。失職によって開いたポストに新規採用する手続きが必要になるのです。
 新規採用は採用者が任意に行う事ができ、いかに業績や能力のある人でも採用されるとは限りません。一般には、任期付の職に就業する職員が再任をめざしてどんなに業績をあげても、法人がその職員を失職させたければ自由に失職させることが可能なのです。京都大学再任拒否事件の地裁判決にみるように、再任を拒否された側が任期中の業績に基づいて法的な救済措置を求めるのはきわめて困難なのです。
 九州大学はこのように危険な任期制を必要な議論もつくさず安易に導入し、さらに導入部局の拡大をはかろうとしています。任期制の安易な拡大をやめ、導入した任期制を廃止することも視野に入れた再検討を開始する事が今必要とされています。

「ほとんどが再任」の保証はない

 九州大学で導入した任期制では再任が可能だとされています。任期制導入部局における導入時の説明をそのまま信じて、「よほどのことがない限り再任される」と考える教員も多いかもしれません。しかし「再任」と「任期制」いうのはそもそもそぐわないもので、その結びつきは非常にもろいのです。
 任期制を導入した九州大学の各部局研究院長は口頭でrほとんどの教官が再任される」ことを約束しました。しかし将来的にそれが守られる保証はありません。公的文書しても残っていません。たとえそのような文書があったとしても、「ほとんどの場合に再任される任期制」などというものは社会的に説得力がなく、批判されれば維持することは困難です。
 九州大学で導入された任期制はきわめてずさんなものです。実際、任期制が導入された部局のなかにはいまだに具体的な再任基準を設けていないところもあります。また再任基準を決めたところでも、その基準はきわめて抽象的で、恣意的な審査が行われる余地が十分あります。
 任期制の導入は、教員の雇用条件を著しく不安定化しました。職員の雇用条件を改善し、安心して働ける職場を目指すため、何のメリットもない任期制の廃止を真剣に検討すべきです。また当面、任期付ポジションから任期のつかないポジションヘの移行を可能にするような制度を検討するべきです。さらに、再任審査が公平に行われるように客観的な再任基準を明らかにし、公正な審査機関と不服申し立て機関を設置することが必要です。

全部局全職種への任期制適用は違法

 全職種への任期制導入は任期制の趣旨に反します。任期制法では任期制の適用範囲を先端的、境界的な研究分野に制限しています。これは大学教育・研究の中枢を担う職全般に不安定雇用が適用される弊害をみこしたものだと言えます。したがって九州大学医系研究院、工学研究院、農学研究院等において導入された全部局全職種任期制は違法です。「九州大学における教育研究はすべて先端的学際的総合的だから」(将来計画委員会資料)という説明は外部では通用しないものです。法律的な問題以前に、全部局全職種の教員職を任期職という不安定雇用に変えようという九州大学の方針は、継続的で安定した研究教育の体制を自ら放棄する無責任なものと言えるでしよう。

導入の外圧に抗しきれないというけれど

 九州大学における任期制導入の際の決まり文句は「任期制を求める社会的な要請(外圧)がある」でした。しかしそのような要請の具体的な内容や、その是非について議論した形跡はありません。外圧があるから議論もせずに導入するという態度は理解しがたいものです。それとも外圧をタテに任期制の導入を正当化しようとしたのでしょうか。「任期制を導入しないと運営交付金を減らされる恐れがある」などという声もよく聞きます。しかし、これこそ任期制法の国会付帯決議が「いやしくも大学に対して、任期制の導入を当該大学の教育研究支援の条件とする等の誘導や干渉はいっさい行わないこと」と戒めていることであり、そのような圧力が実際にあったとしたら大問題です。
 一方、九州大学では任期制導入に対するあからさまな内圧があります。任期制を導入していない部局に対して1%の予算削減をしているのです。組合の抗議に対する九州大学当局の回答は「学内での判断だから国会付帯決議とは無関係」というものでした。しかしこれは国会付帯決議がどのような理由で何を目的にしてなされたものかを考えれば、一般には通用しません。明らかな付帯決議違反です。

任期制と業績審査とは別

 九州大学の全教官任期制導入の目的は、再任時の業績審査で成績の悪い教官を切ることであると説明されてきました。しかし業績審査は業績審査で、任期制とは別にやれることで、実際、任期制を導入していない部局でも厳しい業績審査が行われている事はご存知のとおりです。その是非はともかく、就職、昇格、外部資金獲得などにおいて、研究者の世界では業績評価にもとづく競争原理はすでに縦横無尽に作動しており、このうえさらに任期制導入をして競争をあおる必要性があるかというと大いに疑問です。むしろ、職員の業績水準を上げるためには、短期不安定雇用によって職員が研究や教育に集中できない環境を作るよりも、業績を挙げた職員に報償を与えるなど他の方法を考えるべきです。

任期制で教員の流動性はあがらない

 任期制の導入のもうひとつの目的は研究ポストの流動性を高めることだといいます。しかし、「ほとんどが再任」だとすると流動性に対する効果がないのは明らかです。かといって、九州大学に再任不可の任期制を導入したところで、他大学・研究機関との間の「双方向の」流動性が増加することは期待できません。九州大学のポストが任期付という不安定職になることで、優秀な研究者の九州大学への流入が減り、九州大学からの流出が増えるだけです。流動性を高めるには異動の際の研究機材移転の補助、研究室立ち上げの補助などの方がよっぼど効果があるという指摘があります。このような九州大学のなかでも対応できる流動性を高めるための即効性のある措置の導入こそが必要なのではないでしょうか。

任期制の導入で九州大学の魅力はガタ落ち

 任期制を導入した部局では、ポストの魅力が薄れるため、任期制を導入していない大学や研究機関との研究者獲得競争できわめて不利な立場に立つことが予想されます。雇用の不安定性を高い賃金で補うなど、大学法人として経営戦略を考えるなら任期制導入と同時に当然考慮しなければならない制度も検討されていません。任期制の導入は九州大学や部局のポストの魅力を削ぎ、九州大学の衰退をもたらします。九州大学という大きな大学に大規模な任期制を導入することの影響はそれだけにはとどまりません。任期制という不安定雇用が広範囲の大学に広がれば、研究職そのものの魅力の減少にもつながります。それによって若者の研究者離れが起これば、日本のアカデミズムは長期にわたって回復の困難な打撃を被ることになります。

任期制とキャンパス移転の危険な関係

 いくら考えても何も利点が見当たらない九州大学の任期制導入。導入推進派の本当の狙いはどこにあったのでしょうか?それが目的だったどうかはともかく、ひとつ考えられる重大な懸念があります。大規模な部局再編とリストラのために任期制が使われる危険性です。
 独立行政法人化にキャンパス移転の資金不足が加わり、これから九州大学の経営は非常に厳しくなることが予想されます。部局の再編の動きも出てくる可能性があります。そのとき任期制を導入した部局では「採算性が低い」と判断された部門を丸ごとカットすることも可能になってしまいます。大量解雇をしなくても、全員の再任を許さないという「正当な手続き」を行うだけで、ひとつの部局をまるまる消滅させるなどという乱暴な再編策も、任期制があれば不可能ではなくなります。

任期制を導入してしまった部局…次の一手は?

 ずばり任期制を止める事です。徳島大学では、いったん導入した教官全員への任期制の矛盾に気づき、独立行政法人化に際してこれを廃止して業績審査制に切り換えました。九州大学の任期制導入の趣旨説明は、任期制よりも業績審査制に近い考え方だったのですから、任期制を廃止して困る事は何もありません。
 「ほとんどの人が再任される」などという何の保証もない虚偽の説明を受けて同意書を提出してしまった人は、その事実を証明できれば、同意書の撤回を求めることができます。当局が撤回に応じなければ契約無効の訴えを起こすこともできます。
 明示的で客観的な評価にもとづく再任審査基準を定め、公表すること、再任審査への不服申し立て手続きや機関を設置する事も重要です。これは研究者の雇用条件を不安定化させる任期制を導入した部局が被雇用者に対して払うべき最低限の責任と言えるでしょう。また、任期つき職から任期のつかない職への移行について検討すべきです。任期が切れて失業する職員に対して就職支援等の最大限の援助を行う事が求められます。

任期制に対する組合の要求項目

●任期制法の趣旨に反する全部局全職種への任期制導入をこれ以上行わないこと。
●すでに医系研究院、農学研究院、工学研究院、応用力学研究所等に導入されている任期制の必要性と妥当性について、法人化後の事情や法的な面も考慮し、その廃止も含めた再検討を開始すること。
●任期制法の付帯決議に反する任期制非導入部局への予算削減措置を直ちにやめること。
●教員が任期つきのポジションから任期のないポジションに移行する手続きを整備すること。
●教員の選考、再任の審査については、関連分野の審査員の意向を最大限に尊重すること。再任における不服申し立ての手続きと機関を設け、公正な審査ができるような体制を整えること。
●任期つきのポジションにいる教員について、病気、出産などによってやむを得ず教育、研究の場を離れざるをえない場合に不利が生じないように、制度上の配慮を行うこと。


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2003年05月15日

九大教職員組合、「工学研究院における任期制同意書不提出者に対する差別を撤回させました」

(出所)九大教職員組合ニュース(2003年5月15日)

九大教職員組合ニュース(2003年5月15日)

「工学研究院における任期制同意書不提出者に対する差別を撤回させました」

 すでに、お伝えしたとおり(「工学研究院における任期制同意書不提出者に対する差別待遇問題」(2003年5月6日))、本年4月1日、新たに任期制を導入した工学研究院では、導入に際して任期制ポストへの配置換えに対する「同意書」を提出しなかった教員に対して、不当な圧力がかけられていました。
 工学研究院長は、さる4月9日の同研究院部門長会議において「特別昇給の対象者を任期制に同意した者に限る」ことについて提案し、各部門での検討を指示しました。

 教職員組合では、4月23日、九州大学学長に「工学研究院における任期制同意書不提出者を特別昇給対象から排除するための検討についての申し入れ」を行いました。

 このことについての回答が5月15日、本部人事課よりありました。その模様を、組合側の速記録にもとづいてご報告します。

(人事課長)組合からの申し入れの趣旨は、わたしも全くそう思う。総長も同じ考えである。それで、総長の考えを工学研究院長にも工学部事務を通じて伝えた。特別昇給は勤務成績が優秀な者につけることになっており、同意書の提出、不提出で判断するものではない。5月14日に行われた部門長会議でも反対意見が多かった。研究院長も特別昇給の趣旨も理解し、今後この問題が提案されることはない。
(組合)この問題は、研究院長も特別昇給の趣旨を理解し、反対も多かったので、白紙に戻ったと考えていいか。
(人事課長)そうだ。

 工学研究院長の理不尽な提案を撤回させたことは、あらためて組合の存在意義を示しました。工学系支部、中央執行委員会がこの問題について機敏に対応したことが、この成果につながったと思います。

 今後も組合の活動にご注目ください。


Posted by 管理者 : 掲載日時 2003年05月15日 15:04 | コメント (0) | トラックバック (0)
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2003年05月06日

九大教職員組合、「工学研究院における任期制同意書不提出者に対する差別待遇問題」

(出所)九大教職員組合ニュース(2003年5月6日)

九大教職員組合ニュース(2003年5月6日)

「工学研究院における任期制同意書不提出者に対する差別待遇問題」

 本年4月1日、新たに任期制を導入した工学研究院では、導入に際して任期制ポストへの配置換えに対する「同意書」を提出しなかった教員に対する不当な圧力がかけられています。
 工学研究院長は、さる4月9日の同研究院部門長会議において「特別昇給の対象者を任期制に同意した者に限る」ことについて提案し、各部門での検討を指示しました。
 しかしこのような提案は以下の理由からまったく不当なものです。

1。特別昇給は、任期の有無とは無関係であり、それにもとづく差別はできません。
2。本年2月28日の教職員組合との学長交渉における確認事項、すなわち、同意書を提出するように強制しないこと、出さなかった人が不利益にならないことに、明白に違反します。

 教職員組合は、これまで学長交渉における確認事項は、基本的には誠意をもって守られてきたと認識しています。しかし今回のような事態は前代未聞のことであり、教職員組合との関係、労使間の信頼関係を著しく損なうものです。

 教職員組合では、以上の趣旨にのっとり、4月23日、九州大学学長に「工学研究院における任期制同意書不提出者を特別昇給対象から排除するための検討についての申し入れ」を行いました。

 今回の事態は、以下のことを示しています。

1。任期制が導入された部局では今後も、「同意書」を提出しない教員に対して、手段
を問わず不当な圧力が行われかねないこと。
2。任期制が導入されていない部局でも今後、任期制導入と「同意書」提出への圧力が強化されかねないこと。

 任期制問題は終わっていません。監視と警戒を強め、連帯しましょう。

九大における任期制問題については、こちらをご覧ください。

Posted by 管理者 : 掲載日時 2003年05月06日 15:02 | コメント (0) | トラックバック (0)
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2003年04月15日

九州大学教職員組合、「議論しよう.連帯しよう -任期制問題についての中間総括-」

(出所)九州大学教職員組合、「議論しよう.連帯しよう -任期制問題についての中間総括-」

議論しよう.連帯しよう -任期制問題についての中間総括-

2003年4月15日 九州大学教職員組合

 九州大学では、2003年4月1日より、医学、薬学、農学および工学研究院、先導物質研究所にて「全教員ポストへの任期制一律導入」が行われました。また、昨年より本部から各部局へなされた、2004年度からの独立行政法人化移行後における、同じく一律導入についての意見聴取についても、継続審議扱いとなっています。
 九州大学教職員組合では、従前より高等研究教育機関における任期制は、学問の教育・研究の趣旨にそぐわないとの理由から反対してきましたが、今回の動きは、従前とは比較にならないほど憂慮すべき事態であると認識し、反対の運動をつづけてきました。
 ここでは、九州大学の将来を憂えるすべての皆さんに、現状を認識していただき、部局や集会での議論にお役立ていただくため、現状の総括と今後の問題点をまとめます。

1.現状の総括
 平成6年の法律制定、同13年の九大規則の制定以後、九大では任期制導入の法制的整備は進み、一部の研究所ではすでに導入されていました。今回、医学、薬学、農学および工学研究院、先導物質研究所において、全教員、全職種一括導入がはかられ、各教員からは「同意書」をとりつけられました。
 今回新たに任期制が導入され、任期付きポストへの「配置換え」へ同意された教員の割合は以下の通りです。
医学研究院:67%. 薬学研究院:92%. 農学研究院:70%. 工学研究院:86%. 先導研究所:100%
各研究院では当初100%の同意書提出を当然としていましたが、少なからぬ教員がこれを拒否したことが明らかです。

2.今回新たに導入された部局における組合の対応
(1)今回「同意書」を提出なさらなかった教員について
 「同意書」の不提出が将来労働条件において不利な取り扱いを受けないように、組合として監視を強めていきます。この点は、法律上はもちろん、本年2月の学長交渉においても、当局より明確な回答を得ています。
 「同意書」を提出なさらなかった教員は、将来にわたっても任期制の適用を受けません。ただし、今後昇任、配置換え等によってポストを移動する際には、移動後のポストが任期制であれば、その都度「同意書」が要求されることとなります。
(2)今回「同意書」を提出された教員について
 今後、任期制が恣意的な運用を受けないよう、組合として監視を強めていきます。この点は、すでに任期制を導入した他大学等の例を見る限り、楽観は許されません。
 以上のいずれの場合でも、個別の事例、制度上の問題(審査基準ほか)を問わず、問題が生じれば、組合へご連絡ください。

3.今後の問題点
(1)今回の任期制導入への危惧の再確認
 今回の導入の趣旨については、当局より、これは勤務評定であり、「事実上ほとんどすべての教員が、審査の結果再任可となるであろう」との説明がなされてきました。
 しかしながら、任期制法自体は、あくまで流動性を目的に制定されたものであり、法の趣旨から逸脱しています。また、「中期目標・計画」等に記載されれば、外部評価によって流動性の有無が判定され、結果的に当局の趣旨とは異なる運用が行われる可能性があります。
(2)任期制導入問題は終わっていない
 九大執行部からは、独法化以後において「全学・全教員」へ任期制を導入することを前提に、昨年末に各部局の意見聴取が行われましたが、いくつもの部局から異論や批判が出され、学長交渉においては、この問題は「継続審議」と回答されています。
したがって、今後も各部局に対して、「全教員、全職種」導入の圧力が繰り返されるものと思われます。
(3)独法化後の労働条件問題
 独法化後、教職員の労働条件が根本的に変更され、労使協定、労働協約、就業規則等を雇用者側と労働者側が策定することとなりますが、このなかで、任期制を含む教員の労働条件が規定されるものと思われます。今秋に策定が予想される法人化後の就業規則に今回のような条件の任期制を未導入部局や未適用教員に持ち込むことは、「労働条件の不利益変更」になるので困難というのが組合の見通しです。したがって、それまでの段階で、同意書提出の再要請や新規導入などが図られる可能性も否定できません。

 一人一人が、自分の生き残りだけを考えて他者に無関心になるとき、関係者の連帯が阻まれ、結果的に権力の思うがままに翻弄されることになります。組合は、「1人は皆のために、皆は1人のために」をスローガンとし、一人一人を支えるとともに、関係者の連帯のために努力します。

 組合は、組合員のボランティアと組合費によって支えられています。

(「九州大学教職員組合は、「全教員、全職種に対する任期制の一括導入」に反対しますー九州大学全教職員へのアピールー」 はこちらをごらんください)


Posted by 管理者 : 掲載日時 2003年04月15日 14:59 | コメント (0) | トラックバック (0)
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2003年04月14日

九州大の理工系教官、半数強を任期制に

日本経済新聞(2003/04/14)

 九州大学は四月から理工系の研究院(大学院研究科に相当)で教官の半数強に任期制を導入した。各研究院とも助手から教授までの全職種が対象で、文科系を含む全教官二千二百七十三人のうち四割強が任期制になった。これだけ広範囲で任期制を導入するのは全国の大学で初の試みという。
 任期制を導入したのは医学、薬学、工学、農学の四研究院と先導物質化学研究所。任期は研究院では五年、先導物質科学研は六年。教官の研究・教育能力などを教官自身や外部の評価をもとに大学が審査し、再任の可否を決める。
 任期制とするかどうかは教官本人の同意が必要だが、対象となった組織でおよそ八割の教官が同意したという。梶山千里学長は「教官の意識を改革してもらうのが狙い」と話している。
 大学教官の任期制は一九九七年以降、導入が進み、文部科学省の調査では国立では五十五大学が導入している。ただ学部全体での導入例は医学部などに限られる。導入時点で現職の教官は対象外となる例も多かった。
 九大は二〇〇〇年度に大学院の研究・教育組織である研究科を教育組織の「学府」と研究組織の「研究院」に分離した。任期制はこれまで生体防御医学研究所など三研究所にとどまっていた。

Posted by 管理者 : 掲載日時 2003年04月14日 17:28 | コメント (0) | トラックバック (0)
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2003年03月06日

九州大学教職員組合、任期制「同意書」の提出にあたって法的問題と学長交渉での確認

(出所)九州大学教職員組合、任期制「同意書」の提出にあたって法的問題と学長交渉での確認

任期制「同意書」の提出にあたって法的問題と学長交渉での確認

2003年3月6日 九州大学教職員組合

一.任期制導入をめぐる法的問題
1.再任制は、任期制法の趣旨に反する。再任はあくまでも例外的な措置。

任期制法は、流動化を目的に制定されたもので、任期終了後は退職するのが本来のあり方です。だからこそ、法的に、任期制の導入は限定的とされるのです。学長ほか一部の研究院長が主張する「勤務評価」は、任期制度とは法的には別次元の問題です。
重要な点は、任期制導入後は、部局長や学長の勝手な誤った解釈とは無関係に、任期制法の本来の趣旨どおりに「第3者評価機構」による厳しい流動化率のチェックが入り、任期付きのポストにいる人は、原則的に辞めなければならない可能性があることです。

2.任期制の一律導入は、任期制法の趣旨に反する。任期制法はあくまでも、「先端的、学際的または総合的な教育研究」分野におけるものであり、本来は「限定的に導入される」べきもの。

任期制法は「限定的な導入」を趣旨としており、現在進められている一律導入がこれに反することは、1997年5月参議院文教委員会における雨宮高等教育局長の見解、九大部局長会議における法規掛長の発言、任期制法に対する衆参議院付帯決議からも明白です。
関係部局長は「早晩、全学一律導入が課せられるから、部局で先に導入した方がベタ-」などと説明しましたが、九大人事課長との懇談会(2003年2月20日)においても事務サイドとしては「全学一律導入を書類に盛り込んだことはないし、それを薦めたこともない」と発言しています。

3.任期制一律導入の際の法的基準や規定は存在しない。

任期制法第4条1項が該当の根拠とされていますが、ここに掲げられた「先端的、学際的または総合的な教育研究」分野への適用は、各部局が勝手に全ポストがこれに該当すると判断しているのであって、何らかの法的基準や規定に基づいて判断しているわけではありません。いわば部局によって恣意的に全ポストが任期付きにされている状態です。
上述の人事課長との懇談会でも、この点については、すべて部局の意向であることが明らかになりました。

4.現職の教員への任期制の導入は、依然として根拠は曖昧なまま。

任期制法では、任期制の導入は「その職に就けるとき=任用」に際してと規定(任期制法第4条1項)されており、 既にポストについている教員に対して、任期制ポストへの任用があり得るのかが問題です。
当局は、任期なしのポストから任期付きのポストへの「配置換」を行い、これを「任用行為」と見なすつもりのようです。「配置換」が「任用行為」にあたることは、人事院規則8-12「職員の任免」第3章第5条に記載がありますが、これは教員の場合は職階制が実施されていないため適用の対象外です。
この点で人事課提出資料には、「昇任または降任の場合を除き、職員を任命権者を同じくする他の官職に任命する場合」は「配置換」と運用するという昭和43年6月1日人事院事務総長通知(任企344号)が含まれていました。しかし、人事課自体も、関係部局長も、この点は一切触れていないし、またそのような運用が一般論として存在するにしても「任期のない教授」と「任期付きの教授」は「他の官職」と言えるとか、またこうした運用が大学教員にあてはまるとかの解釈を、人事院は何らしていません。
このように現職教員のまま任期を付けることが任用行為なのかどうか、任期制法に該当するかどうかが、依然として曖昧なまま「同意書」取り付けが強行されようとしているのです。

二.「同意書」をめぐる法的問題
 1.「同意書」を出さない限り、自らに任期を付されることはない。
 
 任期制付きのポストへの移行には、本人の「同意書」が必要であり、それを拒否した場合は任期は付されず、当該ポストは任期なしのままです。これは、上述の人事課長との懇談会でも確認済みです。

 2.「同意書」を出さなくても、「提出しない人が不利益になるようなことはしない」。

 「同意書」は強制されたり、「提出しない人が不利益になるようなことはしない」ということは、2月28日に行われた学長交渉において、学長が明言しています。この点は、上述の人事課長との懇談会でも確認済みです。「同意書」の強制は、違法行為なのです。

 3.「同意書」を提出しない場合。

この場合、本年夏から秋に予想される就業規則の作成において任期制の導入が再び画策された場合、労働条件の不利益変更とし
て、労働基準監督署に申し立てることができます。これによって自らの労働条件が保障される可能性は極めて大です。

 4.「同意書」を提出した場合。

この場合、就業規則作成の際、そのまま労働条件に任期制が盛り込まれることに対して異議を申し立てることは困難です。労働条件の不利益変更として労働基準監督署に訴えても、認められない可能性が大きいのです。しかも、不服裁判を起こしても、現在の判例の流れでは勝てる保障はありません。となると任期終了後は、原則的に辞めなければならないことになります
したがって、すでに任期制を導入した部局においては、今回の地位の変更が独法化以後に継承される可能性が高いといえます。

三.学長交渉での確認(抜粋)
「同意書」を強制したり、提出しない人が不利益になるようなことはしない

(1)研究者の雇用の不安定化をもたらすとともに、教育・研究の発展に悪影響を及ぼす教員の任期制を廃止すること。新たな導入はしないこと。
(学長)任期制は流動性を高め、多様な人材を確保する目的で作られたもので、教育・研究を活性化するための意義は大き
い。
(組合)法の趣旨や目的は教員の流動化であり、学長がいう「勤務評定」ではない。
(学長)任期の言葉、解釈に問題がある。私は、ある期間を定めた「評価制度」であると認識している。
(組合)法律は教員の流動化が目的で、その趣旨に沿って運用がなされるのではないか。
(学長)流動化は九大だけではできない。流動化を高めるためのひとつの方策である。
(組合)実態が「評価制度」であれば任期制ではなくそれに即した手法をとればよいのではないか。
(学長)個人の「同意書」は本人が同意しなければ任期付きにはならない。
(組合)「同意書」を提出するように強制したり、実質的な強制にあたるような勧奨をしないこと。出さなかった人が不利益にならないことは確認したい。
(学長・事務局長)それはごく当たり前のことで法的にもそうなっている。
(組合)助手は多様な形で教育研究にかかわっているが、すべて一律に導入できるのか。
(学長)専攻分野で全然違うと思う。自分の分野では助手も教授と同じに扱ってきた。
(事務局長)例えば事務助手の実態があるが、これに任期をつけることはできない。それはそれぞれの講座で判断されればいい。

*九大における任期制導入をめぐる法的問題、「同意書」提出の意味、その他チラシの内容についてご質問、ご意見があれば、ぜひ教職員組合へお尋ねください。
*また、「同意書」提出を強制されたり、提出しないことで不利益に扱われると感じたら、ぜひ組合にご相談下さい。
組合でも顧問弁護士とも連携して対応していきます。


Posted by 管理者 : 掲載日時 2003年03月06日 14:56 | コメント (0) | トラックバック (0)
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2003年02月14日

九州大学教職員組合、適法性を欠く農学・工学両研究院の任期制導入を九州大学として承認しないよう求める申し入れ

(出所)「適法性を欠く農学・工学両研究院の任期制導入を九州大学として承認しないよう求める申し入れ」

2003年2月14日 

九州大学学長 梶山 千里 殿
九州大学教職員組合  執行委員長 中江 洋

適法性を欠く農学・工学両研究院の任期制導入を九州大学として承認しないよう求める申し入れ

 去る1月に,農学研究院,工学研究院の教授会のそれぞれにおいて全教員一律の任期制導入を決定したとされ,九州大学評議会において,導入実施のための「九州大学教員の任期に関する規則」改訂の審議を求めるとされています。
 しかしながら,今回両研究院で導入しようとしている任期制は「大学の教員等の任期に関する法律」(平成9年6月13日法律第82号,以下「任期法」)に照らしても適法性を欠くと判断されるため,単に「各部局の決定・判断を尊重する」として扱うことは到底できないと考えられます。したがって九州大学教職員組合として本件について反対を表明するとともに,学長および評議会におかれては当該任期制導入を承認しないよう申し入れます。

1.「研究院の全部門・全職種が任期法に該当する」ことの適法性について

 任期法は第4条第1項第一~三号において「任期を定めることができる」3つの場合を特定している。両研究院長はそれぞれの研究院の全部門・全職種が,このうちの第一号,すなわち「先端的,学際的または総合的な教育研究であることその他の当該教育研究組織で行われる教育研究の分野または方法の特性にかんがみ,多様な人材の確保が特に求められる教育研究組織の職に就けるとき」に該当すると説明している。
 しかし任期法は本来「限定的に導入されるものと立法の趣旨はなっている」(平成9年5月29日参議院文教委員会・文部省高等教育局長答弁)のであって,そもそも部局を丸ごと任期制にあてはめることが「立法の趣旨」に適合しているかどうかが,極めて疑わしい。にもかかわらず導入するというのであれば,全部門・全職種が「先端的,学際的または総合的な・・・特性」を有し「多様な人材の確保が特に求められる職」であることを,明確で具体的な根拠と基準にもとづいて検討・審議・論証し,さらにその結果を関連する全教員はもちろん国民全体に対して示す説明責任がある。
 「大学の教員等の任期に関する法律等の施行について」(平成9年8月22日文部事務次官通達・文高企第149号)が「当該教育研究組織を構成する全ての職を任期付きとすることも,一部の職のみを任期付きとすることも可能である」としているとは言っても,それは上述のような論証や説明責任を果たさずに「可能」なわけではないことは明白である。
 しかるに,両研究院においてかかる点が検討・審議・論証され,さらに社会に対する説明責任が果たされたとは到底判断しがたい。したがって両研究院における任期制導入は,法の趣旨に反し、適法性を欠くと言わざるを得ない。もしこのまま導入が実施されることになれば,それは「任期制の適用の対象や範囲,再任審査等において,その運用が恣意的にならないよう,本法の趣旨に沿った制度の適正な運用が確保されるよう努めること」という衆参両院文教委員会付帯決議に反する「恣意的運用」にほかならない。

2.既に当該職に就いている教員に任期を付すことの法的有効性について

 任期法第4条は「任命権者は,(中略)教育公務員特例法第十条の規定に基づきその教員を任用する場合において,(中略)任期を定めることができる。」としている。国立大学教員を「任用」するとは,国家公務員法(第四款「任用」第50条,第55条など)および教育公務員特例法(第二章「任免,分限,懲戒および服務」第4条,第10条など)によれば,「採用」「雇用」「昇任」「転任」のいずれかを指している。 したがって法条文に照らせば,改組もない,昇任もない,まして新規採用でもない両研究院の現職教員について,「任用」行為は存在せず,したがって「任期を定めることができ」ない。これは「同意書」を提出するかしないかとは関係のないことである(仮に「同意書」と銘打った文書が作成,提出されたとしても,それは任期法に言うところの「同意書」には該当しない)。
にもかからわず,両研究院が現職全教員に現職のまま任期を付すことは,法条文に即して判断すれば無効と考えざるを得ない。こうした重大な問題を放置したまま導入を強行すれば,これまた「適用の対象や範囲」についての「恣意的運用」にほかならない。しかも、法的に身分を保障された現職教員に任期を付すことは、国家公務員法ならびに教育公務員特例法上に規定された教員の権利を著しく侵害するものである。

以上の理由から,以下を申し入れます。

一.適法性を欠く農学研究院,工学研究院の全教員への任期制導入について,承認しないこと。

二.両研究院長は「適法性,法的有効性について事務局でも確認している」旨を公の場で説明しているが,事務局としてそのような確認をしたのかどうかを明らかにすること。もし「確認した」のであれば,それはいかなる法律,命令,規則に依拠し,またいつ,誰(官職名と氏名等)の法令解釈によるのかを,文書で明示・公開すること。
 また評議会で本件について取り扱う場合は,当然のことながらその点を文書で明示した上で審議すること。


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2003年01月07日

九州大学教職員組合、農学研究院と工学研究院における任期制導入をめぐって

(出所)「農学研究院と工学研究院における任期制導入をめぐって」

農学研究院と工学研究院における任期制導入をめぐって

2003年1月7日 九州大学教職員組合

 教職員の皆さんに新年のご挨拶を申し上げます。

 さてその年明け早々から,農学研究院と工学研究院において平成15年度,すなわち想定されている国立大学の法人化前に,全教員一律の任期制を導入するための動きが山場を迎えようとしており,両研究院の執行部においては「任期制の職に就くことについての同意書」の取り付けも日程に上らされつつあるものと思われます。
 この全教員一律の任期制導入について,提案者側からはその基本的目的が教育・研究の活性化にあること,教員としてごく常識的な業務を遂行していれば(したがって圧倒的多数の教員は)再任されることを想定していることが繰り返し説明されてきました。しかしながら導入準備の「最終局面」に至って,根拠法である「大学の教員等の任期に関する法律」(平成9年6月13日法律第82号,以下「任期法」)
との正確な関連も含めて,この全教員一律任期制のもっとも根元的な意味,前提条件,および展望が必ずしも明確になっていないことが浮かび上がってきています。
 そこで以下に,どうしても議論を尽くし,明確化しておく必要があると考えられる論点のいくつかを指摘し,関係する全ての教職員の皆さんに是非検討していただくよう呼びかけます。導入を急ぐ執行部の観点からすれば,とにかく「スケジュール」に間に合わせるためには「もう時間はない」「最終決断するしかない」ということかも知れませんが,事は全ての教員の身分に関わるのはもちろんのこと,両研究院・学府・学部の教育と研究が本当に活性化しうるのかどうかという将来に深く関わる問題であり,いたずらに「スケジュール」を優先すべき事柄ではないと考えるべきではないでしょうか。

1.研究院を構成する全部門・全職種が任期法に該当するか?

 任期法は第4条第1項第一~三号において「任期を定めることができる」3つの場合を特定している。両研究院で導入しようとしている任期制はその第一号,すなわち「先端的,学際的または総合的な教育研究であることその他の当該教育研究組織で行われる教育研究の分野または方法の特性にかんがみ,多様な人材の確保が特に求められる教育研究組織の職に就けるとき」でしかありえないはずである。(な
おここで「多様な人材の確保」と任期制が結びつけられるのは,同法第1条「目的」からわかるように任期制によって教員を流動化させることで「多様な人材」が確保されるというロジックであることは言うまでもない。)
 では,両研究院を構成する全ての部門の,さらにその全ての教員が「先端的,学際的または総合的」等の特性を持ち,それがゆえに任期制を用いることによってはじめて「多様な人材が確保」されるものなのかどうかが,各部門等において十分に検討されたのだろうか。一例として,任期5年制の下では1年目以外は大学院生(博士前期・後期で計5年)を責任を持って受け入れることが困難になることも予想されるが,全ての部門がその弊害を冒してでも「多様な人材確保=教員流動化」を進めるべき「特性」を有しているのだろうか。
 また助手についても一律に任期制対象としているが,法第4条第1項第二号において助手に任期をつけることができるのは「自ら研究目標を定めて研究を行うことをその職務の主たる内容とする」場合と規定している趣旨は,今回の場合も当然尊重されるべきである。では両研究院の全ての助手の職務状況について十分な検討がなされ,そのような条件に置かれているかどうかの判断が下されたのだろうか。

2.全教員を現在のポストのまま「任期付き職」に移行できるのか?

 任期法第4条は「任命権者は,(中略)教育公務員特例法第十条の規定に基づきその教員を任用する場合において,(中略)任期を定めることができる。」としている。国立大学教員を「任用」するとは,国家公務員法(第三章第三款「任用候補者」第50条,第四款「任用」第55条など)および教育公務員特例法(第二章「任免,分限,懲戒および服務」第4条,第10条など)の条文によれば,「採用」ないし「昇任」(ないし「転任」)を指している。
 では改組もない,昇任もない,まして新規採用でもない両研究院の現職教員について,「任用」行為が生じるのだろうか。「任用」という事態が存在しなければ,「任期を定めることができ」ない。そもそも任期法が審議・成立する際に,国立大学のほとんどの関係者がそのように理解していたはずである。
 九州大学および両研究院の執行部は,恐らく文部省(当時)による「すでに教員が就いているポストを任期付きとすることもできるが,本人の同意が必要となる」という解釈に依拠しているものと考えられる。しかし本人の同意は新規採用であれ昇任であれ必要なのであって(任期法第4条第2項),本人の同意があれば採用も昇任もないのに現職教員をそのまま任期付きにすることができるという理由にはならない。少なくとも文部省(当時)の解釈が唯一のありうる解釈とは言えないのではないか。

3.両研究院の教育・研究の活性化に本当に必要なのは全教員一律任期制か?

 仮に上記1や2のような法的位置づけの問題が疑う余地無く解決されたとしても(つまりその限りで合法的な導入案だとしても),全教員一律任期制導入が両研究院の教育・研究の活性化にとって本当に,また現時点でどうしても実現しなければならない,最優先の方策なのかどうかは別の論点である。
(1)多くの教員が,教育・研究の業務について何らかの形態による客観的評価の必要性を認識しているし,またその評価を適当な方法で爾後の教育・研究の内容や条件にフィードバックさせること,さらに場合によっては適切な方法と程度でもって教員個々の処遇に反映させることについても議論の余地はあり得よう。しかし教育・研究の実績(しかも結局は数値化された形でのみの実績)が直ちに「失職か再任か」としてだけ反映されるこの任期制は,勤務評価・人事考課の手法として見た場合でさえ,あまりに極端で乱暴なものである。
 両研究院における学問の教育・研究とは,「馘首か否か」によって(よってのみ)活性化されるようなシロモノだったのだろうか。またそのような教員職が,九大以外の職にある研究者やこれから研究者をめざす若い学生等にとって「魅力ある職」になるとは予想できず,したがって「多様な人材の確保」もおぼつかないのではないか。
(2)例えば,全ての教員が文字どおり自主的・自律的に,かつ自己責任にもとづいて教育・研究を遂行できる基本的前提として,大学院生を含む全学生に対する指導(指導教官)権,全ての学位についての審査権,教育・研究予算の予算執行権,教員自らの人事権を,教授以外の教員にも付与することなどは,全教員の教育・研究活動を活性化させるための最も基礎的な条件として,より優先的に検討すべき課題ではないのか。そもそも大講座制への改組が,そのような方向を当然伴うハズではなかったのか。
 いわんや任期制導入を云々するなら,該当する教員全てが自主的・自律的に自己責任もとづいて教育・研究に従事することは,実績評価の大前提になるはずだろう。
(3)また今回の任期制導入提案にあたっては,平成16年度からの国立大学法人化・非公務員化が既定の路線として前提視されている。仮にそうなるのだとすれば,教育公務員特例法による「助手は教員でない」という法的枠組みも無くなる。であればなおさらのこと,助手についても助手職自体の職務見直しや助教授・講師ポストへの振り替え等の諸形態も含めて,やはり自主的・自律的に教育・研究に従事する条件整備を早急に検討すべきではないのか。

4.法人化後の教員人事制度や任期法についての展望は全く不透明ではないのか?

 提案者が「法人化移行前の任期制導入」に強く固執する理由は,「法人化後には部局を越えた大学全体としてのトップダウン方式によって,さらには大学外部からの圧力によって,部局の特性が考慮されずに任期制が課される可能性が強い。部局の特性や自主性を保持するためには,法人化前に部局独自の任期制を導入しておくことが必要」という趣旨につきるようである。 しかし現時点では,法人化後の教員の人事制度や任期法・任期制度の展望は,不透明としか言いようがないのではないか。すなわち仮に現行国立大学制度最終年度に任期制を導入しても,教員の法人移行や任期法についての取り扱いが不透明である以上,その任期制が法人化後にいかなる取り扱いになるかも不透明としか言えない。また九州大学将来計画委員会において「法人化後の全部局・全教員任期制一律導入」なるものの検討が行なわれているが,その構想自体の意味も,またそれと今回の両研究院における任期制導入との関係も,基本的には全く展望できないのではないか。
 かくも不透明で展望を持てない状況で,やみくもに任期制の先行導入を行なうことが,そうでない場合と比べて「部局の特性や自主性の保持」に有効だという判断は,いかなる根拠にもとづくのか。根拠薄弱なままに,多くの論点について十分な検討を経ずに導入すれば,かえって自らを縛り,教育・研究の活性化を難しくするのではないか。

※以上は,切迫する情勢の中でさし当たり指摘しうる問題点,論点のいくつかを取り上げたものです。これ以外にも検討されるべき様々なポイントがあろうかと思います。関係する教職員の皆さんでいっそう議論していただくと同時に,教職員組合にもご意見等をお寄せいただければ幸いです。


Posted by 管理者 : 掲載日時 2003年01月07日 14:51 | コメント (0) | トラックバック (0)
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2003年01月03日

<九州大>助手以上の全教員対象に任期制導入を検討

毎日新聞ニュース速報(2003,1,3)

 九州大学(福岡市)が助手以上の全教員を対象に、5~10年程度の任期制導入を検討している。実現すれば総合大学では全国初。教員異動を促して学問的交流を活性化する狙いという。しかし文系大学院を中心に「短期間で結果を出せない基礎研究分野にはなじまない」と反対の声も挙がっている。

 九大教職員組合(中江洋委員長)によると、全教員への任期制導入は、学内の将来計画委員会が検討している。九大では既に生体防御医学研究所(福岡市東区)など理系の付属3研究所が教官の任期制を導入しており、任期は教授6~10年、助教授6年、講師・助手4~6年。同委員会はこの制度を例に昨年11月、全部局に対象教員の拡大方針を伝え、12月20日までに意見の報告を求めた。文部科学省が04年度に国立大学を独立法人化した場合、文科省に提出する大学の中期計画・目標に「任期制導入」を盛り込む方針という。

 大学教員の任期制は、97年に制定された「大学の教員等の任期に関する法律」に基づき、各大学が導入を始めた。しかし実施対象はまだ付属研究所など一部で、導入済みの国公立66大学の対象教員は計1835人、1校当たり28人にとどまっている(01年8月現在)。

 この方針について、教職員組合は「任期制は先端的、学際的な研究や特定の目的を持ったプロジェクト型研究などの教員を対象と想定しており、全教員を対象にしていない」と批判。さらに(1)哲学や理論物理、数学など基礎的研究分野では5年程度で結果を出すのは難しい(2)任期切れが近い教員は、大学院生の就学期間中に退官する可能性があり、責任を持って学生の指導を引き受けられない――などと反対する。また法学、経済学など文系の各大学院も同様の理由で反対している。

 九大は「内部で各研究院の見解を聞いている段階で、答えられるような内容はない」と話している。

 文科省高等教育企画課の話 任期制は異動を活性化し、教員の新たな出会いを通して新しいアイデアを生み出す目的で導入した。総合大学で全教官を対象にするのは初めてだと思う。 


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2002年12月26日

九州大学全部局・全教員への任期制一律導入反対の申し入れ

(出所)九大教職員組合「九州大学全部局・全教員への任期制一律導入反対の申し入れ」

2002年12月26日

九州大学学長 梶山 千里 殿
九州大学教職員組合 執行委員長 中江 洋

九州大学全部局・全教員への任期制一律導入反対の申し入れ

 九州大学では現在,農学研究院および工学研究院にて「全教員への任期制導入」が決定されようとしており,同時に全学将来計画委員会から各部局に対して,平成16年度からの独立行政法人化移行後における「全部局・全教員への任期制一律導入」についての意見聴取が行われています。
九州大学教職員組合では,従前より,高等研究教育機関における任期制は,学問の教育・研究の趣旨にそぐわないとの理由から反対してきましたが,今回の動きは,以下の理由から,従前とは比較にならないほど憂慮すべき事態であると認識します。

 1.将来計画委員会内で検討されている「全部局・全教員一律導入」は,期限のない雇用を前提に任用されている教員に対して,個々の部局や教員の意志とは関係なく大学の意志として任期制への移行を強いるものであります。これは平成9年に種々の議論の末制定された任期制法のそもそもの趣旨に反する逸脱行為であり、違法であります。また、労働基準法からみても労働条件の不利益な変更であり、就業規則作成の際、労働基準監督署がこれを認めないことさえ十分に予想されます。このような問題について,将来計画委員会文書自体が「根元的議論を行う必要」という意見の存在を想定しながら,それを退けて早急に検討しようとするのは,あまりにも乱暴と言わざるをえません。
現在導入が進められている「全部局・全教員一律導入」が現実のものとなれば、教員のリストラ
や教育・研究諸分野のスクラップ・アンド・ビルドに利用される危険性があります。そうだとすればこれは単に個別の教員の地位に関わる問題ではなく,教員が担当している専門領域,さらには,九州大学の今後の研究教育体制全般に関わる大問題であります。

したがって九州大学教職員組合では,現在進められている「全部局・全教員への任期制導入」の検討
を即刻中止することを求め,以下のことを申し入れます。

 一.任期制導入は労働者の権利という観点から教員の身分と労働条件の重大な変更を意味するので,労働組合との協議・検討を要する事項であることを認めること。
 二.任期制導入は,九州大学の教育・研究体制にかかわる将来計画と不可分に関連していることから,「任期制の根元的議論を行う」ことがあまりにも当然な最低の前提であることを認識し,そのような議論を文字通りに全大学構成員が行う十分な時間的余裕とプロセスを保障すること。
 三.労働組合との協議・検討や全学的な根元的議論がまったくなされていないままに,想定されている法人化後の「九州大学の教員人事の基本方針」や現在検討中と思われる「中期目標・中期計画」に,このような「全部局・全教員への任期制導入」など決して盛り込まないこと。


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2002年12月03日

九州大学における任期制導入についての諸問題

(出所)九大教職員組合「九州大学における任期制導入についての諸問題」(2002.12.3 書記局会議)

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九州大学における任期制導入についての諸問題(2002.12.3 書記局会議)

 九州大学では、平成16年度からの独法化をにらんで、教員の任期制導入の動きが進んでいます。ここでは、部局や集会での議論にお役立ていただくため、書記局による現状と問題点を分析を提供します。
 平成6年の法律制定、同13年の九大規則の制定以後、九大では任期制導入の法制的整備は進み、一部の部局ではすでに導入されています。九大規則のポイントは、任期制の対象その他の詳細は、各部局の判断と決定に委ねられていることです。
 今回、農学および工学研究院において、全教員、全職種一括導入が決定され、各教員からは「同意書」をとりつけることになりました。導入の趣旨については、「大学執行部からの上からの導入の前に、現場に有利な独自規則を部局でつくる」という説明が行われ、「事実上ほとんどすべての教員が再任可となるであろう」とも非公式の場では回答されています。また、九大執行部からは、独法化以後において「全教員、全職種」への任期制を導入することを前提に、現在各部局の意見聴取が行われています。
 以下、現在九大で進められている任期制導入の問題点を分析します。なお、関係の資料は組合で収集・公開していますので、書記局あるいは支部役員へお問い合わせ下さい。
 最後に、現在書記局で議論している今後の闘争方針についても、参考までに添付しました。ご意見をお寄せ下さい。 組合では、今後も、九大や全国の情報を収集・分析していきます。
0。全般的状況
ー1:法制化 ー平成9年6月13日法律第82号 ー平成13年4月1日「九州大学教員の任期に関する規則」ー任期制は、労働協約問題ではなく管理運営問題との解釈
ー2:現行の九大規則のポイント ー研究組織および職等は個別に定める~実質的に部局が決定ー任期を定めて任用する場合に、所定の書式による同意が必要 ー規則については、広く公表し、必要な事項は評議会の議を経て総長が定める
ー3:導入状況 ー生体防御医学研究所付属感染防御研究センター、応用力学研究所、機能物質科学研究所で導入済みー農学研究院、工学研究院に全教員へ一括導入予定: ー独法化後、全部局において導入を検討するようにとの大学執行部からの指示ーまとめ:制度化の形式的側面 ー法制的整備はすでに済んでいる ー各部局の決定として導入ー工学・農学研究院提案の奇妙な性格と、今後の各部局の動向

1。任期制の適用:全部局全教員一括導入と、本来の趣旨との齟齬
ー1:全部局、全教員 ー本来の趣旨は、特定の「先端的」研究職のみが念頭にあったのではないかー教員のすべてが「主体的に研究を行う教員」ではないという現実 ー全国レヴェルの教員流動化という理念と、夢物語という現実の齟齬
ー2:高度な研究・教育との齟齬 ー高度な研究・専門教育は長期的展望を含み、短期の任期になじまないー高度な専門教育では、特定教員の専攻領域が院生に重みを持つという現実 ー研究・教育評価はすでに種々試みられ、改善が進行中
ー3:再任問題:農学・工学研究院提案について ー「全教員対象で、100%に近い再任」?:再任が前提とされる任期制は形容矛盾ー「再任」とは何か?:期間満了により退職の上、再雇用? ー現時点での趣旨と、将来における運用

2。手続き、審査基準
ー1:手続き:農学・工学研究院提案を念頭に ー現在の状況での同意書の提出は自由意志か、拒否することはできるのかー現時点での処置と、独法化の時点での処置との関係:実質的継承関係? ー独法化後の任期制規則はどのようなものなのか
ー2:審査、および審査基準 ー審査の対象枠組み(専攻領域、身分・地位、主要な業務、ほか)ー審査項目(論文数、授業負担、ほか)・基準(項目の達成度) ー審査委員会の構成および審議経過の公正、透明性
ー3:最終的な身分の変更 ー決定の責任主体(教授会、評議会、学長、理事会、ほか)ー公正な第三者機関によるチェック機能(異議申し立て・仲裁) ー身分の消失か、あるいは身分・地位・職種・職場等の変更はあるのか

3。なぜ今九大に導入か:政治的側面

ー1:大学改革 ー組織再編・リストラ:学問の生き残り競争? ー財政問題。財政難。独法化、キャンパス移転。業務のアウト・ソーシング
ー2:大学活性化と研究者流動化:「流動化による活性化」への疑問 ー研究・教育者市場の流動化が全国レヴェルで本当に展開するのかー「有能な」人材が九大に集まるのか。九大への愛着の減退と、人材の流出 ー教員の「使い捨て」による、意欲・活力の低下
ー3:「前へ逃げる」失速な自己改革?:農学・工学研究院提案を念頭に ー先駆けて任期制を導入することが、事後の有利な規則制定・運用を保証するのかー部局責任体制の事実上の崩壊と、大学運営チェック機能の弱体化

4。労働環境問題

ー1:身分・地位:全国的課題 ー退職金、雇用保険等の条件未整備問題:「公務員に失業はない」という前提ー従前の公務員身分・地位からの重大な変更。契約違反
ー2:評価への不信 ー学内民主主義への不信:評価(勤務評定)の恣意性、職場環境の封建的性格残存ー現在の趣旨・約束と、将来の変更への不安
ー3:労働条件 ー任期制によるメリットの具体案なし:より高額の給与補填などの提案がないー全教員による「主体的な」研究を可能とする研究・教育条件の未整備=最低限「小講座」の廃止と、研究費その他の平等な分配の確保

闘争方針案

1。任期制の理念と現実の実施

ー1:適用対象 ー先端的領域、「主体的に研究を行う」職種への限定 ー大学構成員の実態に即した、種々の雇用形態共存の認識
ー2:手続きに厳格な枠をはめる ー審査(審査基準・審査過程・身分の変更)ー同意書(現状の地位の重大な変更という認識のもとでの、自発的な同意)
ー3:法制度処置の透明化、情報公開

2。大学運営全般のチェック・改善・対案提示

ー1:将来計画との関係 ー研究・教育組織の再編計画の民主的策定の環境づくりー公正な財政運営のチェック
ー2:よりよき人事制度の創造・維持への積極的関与 ー独法化後のあらたな教職員制度(リクルート、職種、昇任、ほか)ー複雑多様な職種の共存を前提とした人事制度(基盤部門と流動部門、ほか)
ー3:評価を念頭に置いた上での、研究・教育・労働条件改善運動

3。全般的状況改善と組合によるイニシアティヴ発揮、およびその前提

ー1:あらたな身分を前提とした、労働条件の整備 ー学内的には、労働協約や個別の労働条件整備のイニシアティヴをとるー学外的には、あらたな状況に適応する特別処置の制度化を広範な連携で要求
ー2:個別の問題への対応 ー個別法律相談ほかのサーヴィス ー個別事例の掘り起こしと、個別の対応要求
ー3:情報基盤としての組合の能力強化 ー全国的動向の情報収集・分析能力の向上、そして俊敏な公開ー大学内の様々な情報収集・分析能力の向上、そして俊敏な公開 ー特殊な法制的諸問題等への機敏な対応を可能とする態勢づくり


Posted by 管理者 : 掲載日時 2002年12月03日 14:37 | コメント (0) | トラックバック (0)
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2002年01月18日

九州大学教職員組合、教官の任期制導入についての申し入れ書

(出所)九大教職員組合「教員の任期制導入についての申し入れ」(2002.1.18)

2002年1月18日

九州大学学長
梶山 千里 殿
九州大学教職員組合
執行委員長 三好永作

教官の任期制導入についての申し入れ書

本学応用力学研究所および機能物質科学研究所において「教官の任期制」について導入する内規が教授会決定され評議会の議に付されようとしています。これまで、九州大学教職員組合は、安易な教官任期制の導入は研究・教育の発展に寄与するものではなく、むしろ悪影響を及ぼすものであると考え反対の意見を表明してきました。今回出されている案は「大学の教員等の任期に関する法律」(法律第82号)を根拠に九州大学で生体防御医学研究所に続いてのものですが、改組を伴わないで導入される任期制という点からみて、問題の多いものと考えざるを得ません。

1)まず、何故に任期制を導入するのか、それによって研究・教育の推進にどう効果が期待でき るのかといった重要な点の説明がありません。

2)在職者を含めて全教官を対象とした案となっていますが、この案の決定までの議論のプロセスがまったく明らかではありません。任期制のデメリットについての議論を十分行い,それをカバーする方策を十分検討されたのでしょうか?現在「教育公務員特例法」の適用対象である助教授・講師・助手層は議論に参加できたのでしょうか?十分に意見の集約はなされたのでしょうか?もしそうでないなら、研究・教育を自らの仕事として働いてきた者がまったく突然にその雇用の期限を切られることになりかねません。これは、同じ九州大学に働く者の労働組合としては見過ごす事はできません。

3)具体的な案の内容についても、あまりに問題が多すぎると考えます。
・具体的な任期については、それぞれの部局において
応用力学研究所 教授6年、助教授6年、講師6年、助手6年
機能物質科学研究所 教授6年、助教授6年、講師6年、助手6年となっていますが、その根拠について全く何の説明もないまま提出されています。
この間の全国的な任期制に関する動向の中で示された、東京大学工学研究科の「助教授以下は昇進のインセンティブ(刺激・誘因)があるとしてその対象から外し、教授だけへ55歳以降に2期十年の任期を導入する」とした案と比べてみても、今回の案の問題点は明らかだと思います。
・評価の内容についても単に評価事項を規定しているだけでその基準についても触れられていません。
・異議申し立てのあった場合、教授会の議を経て新たに審査委員会を設置して再審査を行うとありますが、この新しい審査委員会が再任を否決した審査委員会から独立性を保つことの保証がどこにもありません。このことは、今回の任期制が制度的な不備を持っていることを示しています。

私たちはこれらの点について検討され、今回の任期制を慎重審議された上で撤廃されるよう申し入れます。


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1996年03月14日

大学教員任期制=クビキリ制に反対する声明

(出所)都大教ホームページより

大学教員任期制=クビキリ制に反対する声明

1996年3月
九州大学教職員組合中央執行委員会

 大学審・組織運営委員会の文書「大学教員の任期制について」の発表(95年9月)以来、「大学改革」の重要なメニューとして任期制導入がわれわれにおしつけられる気運が高まっている。われわれは、このような「改革」攻勢に対して、第一に研究・教育労働者の処遇の問題として怒りを込めて反対するものであり、さらに研究・教育それ自体に対しても憂慮すべき結果をもたらすものとして強く反対する。
 今日の大多数の大学教員の処遇がけっして「特権」的状態ではないことがまず確認されなければならない。この職業は年俸何千万あるいは何億となる特殊なタレント的プロフェッションではないのである。大学教員への入職コースはさまざまであるが、大部分は大学卒業後、最低で5年の大学院生生活(無報酬どころか高額の授業料支払いなど費用持ち出しの就職準備過程)、さらには何年かのオーバー・ドクターの年限を経て、30歳前後でやっと定職=賃金労働に就く。国立大学教員の場合、その賃金水準は、40歳代に教授昇進をするといったごく順当なキャリアを辿った場合でさえ、民間大企業の職員と比べれば約半分、さらに公務員賃金の抑制が貫徹されてきた80年代以降は、標準的私立大学教員と比べても「処遇」の劣等性は、学会活動への金銭的支援など研究条件の格差拡大とあわせ大幅なものとなった。このような悪条件にさらに重ねて、老齢年金受給以前での何回かの雇用の断絶=失業によるムチを制度化しようというのか!賃金の確保・向上、その前提としての雇用の安定を機能の原点におく労働組合としては全く許しがたい「改革」である。
 とはいえ、もしも任期制導入が教育・研究にプラスの効果をもたらすということがあるなら、労働組合の原点を措いても一考が必要ということになろう。けだし、現代の多くの労働組合は労働の社会的有用性の吟味・向上をもその運動課題としており、また多くの労働者が従事職業を自己の消費生活の手段として位置づけているばかりでなく、自己の労働を通じて社会=他人に貢献することに喜びを感じているからである。多くの教員が「処遇」の劣等性にもかかわらず大学教員を続けているのは、いまさら別の職業に就くべくもないということもあるが、教育や研究における手応え・成果を労働のさまざまな場面で感じるという喜びの慰謝に拠るところが大きい。そこで、任期制が教育・研究の向上に資するかどうかを吟味してみよう。

 (1)まず第一に、就職準備期間が長く、おまけに低賃金で雇用不安定な職業に有能な人材が入って来るかという問題がある。任期不更新=失業の脅威に耐え、教育・研究に犠牲的献身が行える「強い意志の人」か「家産の豊かな人」だけで、この職業を構成することになってよいのか。そのような特別な人々で大学教員が構成されることになった場合の教育・研究は結局貧しい成果しか生まないだろう。
 (2)大学審は、任期制が教育・研究を活性化させるとして、・人事の交流促進、・採用・再任審査の際の業績評価を通ずる活性化、・大学組織再編の容易化の三点を挙げている。加えて、若手教員の資質向上のトゥールにもなるとしている。しかし、この四点ともに教育・研究の衰退・破壊に通ずる可能性が大きいものと、われわれは考える。まず人事交流であるが、教員としての資質に劣るとして再任されなかった人々はどのように交流するのであろうか。非常勤講師など、一層「処遇」の低いポストでもと必死の求職活動を重ね流浪することになるのか。その過程で、研究・教育能力自体が崩壊するということも起こりえよう。そうして空けられたポストに「資質に優る」と評価された人々がやってくるわけだろうが、このような機構は文部省の行財政措置によって系統的に維持されてきた大学の差別化を一層促進することになろう。それで、日本全体の研究水準の向上や、高等教育の充実になるのだろうか。われわれは「ならない!」と叫ぶ。
 (3)業績評価で煽って活性化を図るという主張については、まず現在でも教授昇進または採用のための業績審査などが行われていることを「指摘」したい。大学審文書は「いったん教員に採用された後は、業績評価が行われず、年功序列的な人事が行われ、教育研究が停滞することが指摘されている」と書く。この「指摘」はデタラメだ。このような重要なことについては、他人の「指摘」ではなく大学審みずからの認識を提示すべきである。われわれの認識はこうだ。もし「停滞」の指摘に真実性があるとするなら、次の二点であろう。第一は「評価」が形式的で馴れ合いになっている可能性の存在である。しかし、この論理は任期制にしても、存在しうる。そしてこのような恣意的温情的「評価」は、容易に金力・権力に迎合して、特定人格の差別的排除に転化する可能性が大きい。第二は「教授」昇進以降の問題である。そこでは、近年の「自己評価」を別とすれば、また学会など社会化されたレベルでの評価を別とすれば、たしかに雇用されている機関での「業績評価」は無い。ここにこだわれば、むしろ「教授」職にこそ任期制が必要ということになろう。しかし、大学審文書は「教授」よりも「助手」に任期制運用の力点をおいている。結局、最も蓋然性の高い「改革」のイメージは次のようなこととなろう。現在、自立性を高め「教授を助ける」に徹底できなくなっている「万年助手」「万年助教授」が任期制により一掃され、それに代えて「教授」に従順な若手を次々と交代して研究・教育体制を維持するという姿である。これでは、財界の要望でもある創造的研究者の輩出どころか、大教授先生のクローン人間集団に教員集団が変質してしまうということだ。
 (4)大学審文書は、任期制のメリットの第三として、学問の「新しい展開」に応じて組織再編をするのに「効果的である」と言う。つまりポストを増やさずにリストラ出来ると言っているのだ。学問の自立性、あるいはアカデミック・フリーダムが無視され、伝統的古典的な学問研究の分野の教員がいかに業績を挙げようとも組織再編と任期制の結合で簡単に放逐されることをわれわれは危惧する。
 (5)「多様な経験を通じた若手教育・研究者の育成」も任期制のメリットに挙げられている。たしかに「多様な経験」は教員の発達にとって有用であろう。だが、多くの教員は5年の院生生活、その後何年かのオーバー・ドクターあるいはポスト・ドクターの生活、そして漸くの定職への到達という過程で現に「多様な経験」をするのが普通である。任期制という過酷な制度で「多様な経験」をさせる必要は全くない。その後の「多様な経験」は、潤沢な研究費を基盤に行われ得る国内外での多様な研究交流、学会活動、留学経験などでこそ行われるべきである。
 われわれは、以上の趣旨から任期制導入に強く反対し、その推進者たちに厳しく抗議するものである。同時に、定員・予算増さらには「基幹化・重点化」の代償として軽率に任期制導入を受容するといった致命的不等価交換を行うことのないように、九大教員各員に心から呼びかけたい。(以上)


Posted by 管理者 : 掲載日時 1996年03月14日 10:56 | コメント (0) | トラックバック (0)
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