(国)東北大
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2004年05月12日

「スター教授」世界から、東北大が新人事制度――学部に属さず、学長並み報酬

日本経済新聞(2004/05/12)

研究環境も整備
 東北大学は今夏にもノーベル賞級の研究者を世界中から招へいするための新人事制度を設ける。五人で一億円をめどに報酬を優遇し研究環境も重点整備。学部や研究科に属さず研究に専念する条件で短期契約を結ぶ。大学間競争は今後も激化が確実とみて来週までに文部科学省に提出する六年間の中期計画にも成果主義の拡充を盛り込んだ。
 新たに採用する予定の「ユニバーシティプロフェッサー」は学部や研究科に所属せず特別講義や講演以外の日常的な授業は免除する。約二千二百五十万円ある学長並みの報酬と充実した研究環境をセットにして研究者を呼び込み「全学一体となった研究開発とPRに貢献してもらう」(北村幸久副学長)狙い。早ければ二〇〇五年度当初から採用する方針だ。
 外部の専門家も交えて設けた「人事戦略企画室」が十日から制度整備の具体的な協議に入った。研究者との契約は一年契約が基本だが、より短い要望にも柔軟に対応。大学の広告塔ともなるスター教授を国内外から採用する。多くの有力研究者を抱える工学系だけでなく文系も対象に幅広い分野で人材を探す。
 三月までは国家公務員の給料表に基づいて報酬を支払っていたため「スター教授の優遇には事実上限界があった」(企画調整課)。四月から先進医工学研究機構で初めて導入した年俸制に続き、これまで以上に実績を重視した報酬体系の構築を進めて大学全体の競争力を引き上げる。
 十一日明らかになった二〇〇四年度から六年間の中期計画で東北大は研究成果の客観評価による資金の傾斜配分や給与への評価反映などを中心に据えた。四月の国立大学法人化で高まった大学間競争の機運は有望な研究者の囲い込みを軸に今後も過熱しそうだ。
【表】東北大の中期計画の主な項目(04年度から6年間)  
教職員の人事、評価など  ○性別、国籍、出身校を問わず優れた研究教育者を採用○教員公募の制度化、任期制教員の拡大○年俸制の積極的な導入、管理運営業務への負担軽減○研究情報データベースを利用し成果を評価、公表○教育、研究成果を給与に反映○研究基盤経費は透明性のあるルールに基づき傾斜配分
教育水準の向上  ○06年度目標に、ティーチングアシスタント(TA)制度○06年度目標に、TOEFLやTOEICで単位認定○卒業生の15%程度を対象に、就職先企業への調査を実施


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1997年03月06日

東北大学職員組合、声明「大学教員の任期制の法制化に反対する」

声明「大学教員の任期制の法制化に反対する」

1997.3.6 東北大学職員組合

 大学審議会組織運営部会は昨年9月同審議会に対して「大学教員の任期制について」と題する報告(以下単に報告として引用)を行いました。報告は各大学に通知されると共にマスコミなどにも取り上げられ、学内外で広く論議されつつあります。大学教員の任期制の法制化は、大学のあり方の根幹に触れる問題であり、本組合でも重大な関心を持たざるを得ません。

 報告の大要は以下のようなものです。
1、日本の大学は一般的に、a) 大学間あるいは大学と他機関との間の人事交流に乏しい、b) 自校出身者の比率が高い、c) 年功序列的人事が行われている、などの傾向がある。
2、人事の流動性が低いことは教育・研究の停滞を招くと共に、社会経済の変化に即応した大学の組織改編を妨げる要因となっている。
3、複数の教育・研究機関を経験することが若手教育・研究者のその後のキャリア形成にとって重要である。
4、人事の流動性を高めることにより大学の教育・研究活動を活性化するためには、任期制が効果的である。
5、任期制の具体的在り方として、a) 教授を含む全教員が対象となるが、特に若手教育・研究者に導入することが重要であり、b) 導入は各大学毎に行い、決定は評議会の議に基づいて学長などが行い、c) 研究業績の審査には外部の評価を参考にすると共に、教育業績についても考慮すべきであり、d) 任期制に積極的な大学に対しては財政的支援を行うことが望ましい。
 報告には多くの重大な問題が含まれています。この報告に対する本組合の見解を以下に表明致します。(以下の文中に(註)として出てくる数字は後註の番号です。)
1、報告は日本の大学が閉鎖的で停滞しているとの認識に基づいていますが、これは極めて杜撰な議論です。大学はその設置形態(国、公、私立、総合、単科等の区別)、規模、歴史などの点で極めて多様であるのみならず、専門分野(学部・学科の違い)においても多様です。このような対象を一律に規定することは殆ど無意味であり、詳細なデータに裏付けられた綿密な議論が必要です(註1)。
2、報告では大学の活性化のための最も有効な方策として任期制を考えています。しかしながら、大学における教育・研究の質を低下させている原因としては、財政的貧困、支援態勢(技官・事務官の定員)の不備、権威主義的組織運営などの方がより重要であることは夙に知られています。特に、教員の多忙化による教育の質的低下
が現在極めて深刻になってきていることに全く触れられていないことは大変遺憾です。
3、人事の停滞の原因として大学教員の終身雇用制を挙げていますが、これが主因であるかどうかについては大きな疑問があります。大学間あるいは大学と他機関(国立研究所、民間研究所)との間の人事交流を妨げている要因としては、他にも終身雇用制を前提とした給与体系(退職金や年金の体系を含む)、公務員と民間との間の給与体系の違い、世界に例を見ない程の住宅環境の貧困、高校生の転校に対する障壁、大学間の研究条件の格差、などがあります(註2)。
4、任期制の法制化には、日本社会における雇用形態・給与体系との整合性が密接に関わっています。従って、この制度の安易な導入は、その対象者の生活を危機に陥れることになり、ひいては若い優秀な人材を確保することを困難ならしめる虞れがあります。
5、良く知られておりますように、真理を探求をすること及びそれを学生に教授することにより継承・発展させることが大学の本来の使命です。勿論、現代の社会においては、高度な職業人の養成、研究成果の社会への還元、社会の諸問題(経済、文化、教育、科学等)に対する批評と提言、産業や地域社会に対する貢献等も大学に課せられた使命となっております。
  学問(すなわち真理の探求)における価値判断の基準は、その性格上、法律、習慣、権威主義、多数決などにおけるそれとは著しく異なります。すなわち、ある学問的成果(発見、学説、理論等)の価値を決めるのは、それが正しいかどうか、あるいは正しい場合には当該学問分野でその結果がどれだけのインパクトを持つかによ
ります。この判断基準の下では、学会の大ボスであろうと駆け出しの若手研究者であろうと全く平等です。この判断基準を厳密に解釈するならば、ある学問的成果の評価は歴史的にのみ定まると言わなければならなりません。事実、そのような事例は科学史上事欠かきません。実際問題として、研究費の配分や教員人事などにおいて研究者(教員)の評価が必要とされますが、その場合には当該学問分野の専門家集団による合議で行うことが次善の策となります。いずれにせよ、教育・研究者を評価することが矛盾をはらんだ作業であることを常に意識しなければなりません。
  以上のことから分かりますように、学問の価値判断には政治権力、宗教、その他いかなる外部勢力の関与も許されません。申すまでもなく、学問の自由(Academic freedom)は学問の本質的性格に根ざした概念として歴史的に形成されてきたものです。従って、学問の自由と法制化された任期制とを整合させることは極めて困難であると結論せざるを得ません。諸外国の例をみましても、日本の教授、助教授クラスに相当する教員ポストに任期制を設けている例は皆無です(註3)。
6、大学の諸機関(学部、学科、講座等)や学会における権威主義(いわゆるボス支配)が学問発展の大きな阻害要因であることは良く知られております(註4)。全教員ポストを任期制とすることが権威主義の打破につながるものと期待する向きが一部若手教員の中ありますが、この制度は権威主義を強化し、逆に若手教員を圧迫する手段として使われる可能性の方が大きいことに注意しなければなりません。
7、教員の教育研究活動を評価し、その評価に応じた待遇を与えることにより教員を励ますことは、その評価が適切である場合にのみ有効です。ところが前述のように、このような評価は言うは易く行うは難い種類の問題です。従って、「客観性」の美名の下に数量化(論文・著書数、海外渡航数、招待講演の回数、受賞回数、etc.)のみに基づいた評価がなされがちです。その場合、業績主義(註5)がはびこり、教育・研究の質の低下を促進することになることは必定です(註6)。
8、教育・研究に顕著な成果のあった大学・学部等を財政的に優遇することは必ずしも否定されるべきではありません。しかしながら、財政支援の目的が任期制導入を促進させるためであるとすれば本末転倒と言わざるを得ません。また、教育・研究の適切な業績評価が極めて困難であることを想起しなければなりません。
9、報告は若手の教育・研究者の人事交流の必要性に触れていますが、これについては異論はありません。しかしながら、大学における職階制としての助手について、任期制の立場のみから取り上げていることは問題です。大学における助手は、一部にポストドクター(註7)的なものも見られますが、その大多数は教育研究において大きな一翼を担っています。このような助手については講師として格付けし、その待遇を改善すべきであることは私たちが長らく主張してきたところです。
 以上のように、法制化に基づいて大学教員に任期制を導入することは大変危険なことであり、本職員組合はこれに対して強く反対するものです。大学内外の皆様におかれましては、私たちの真意をくみ取り法制化を中止させるべく共に運動されますよう希望します。
 前項の主張にも関わらず、現在の大学に様々な問題があることを私たちは否定するものではありません。本職員組合は、それらの問題の解決のために様々な運動を行ってきました。任期制との関連で大学の活性化が問題となっていますが、そのために現在必要と思われることを提言として以下に掲げます。これらの提言の一部は、これまでの組合運動の中で採り上げられてきた課題です。他方、現段階では試案であり、今後組合の内外で様々な観点から論議を深めるべきものもあります。
1、最近多少改善の動きが見られるとはいえ、長年続けられてきた校費の増加率抑制政策によりもたらされた教育・研究予算の逼迫状況は依然として深刻です。また、設備や建屋の貧困についても目立った改善はなされていません。さらに、長年続けられてきた定員削減政策によりもたらされた技官・事務官の不足は、危機的状況にあると言えます。これらの問題は一刻も早く改善されなければなりません。
2、大学の閉鎖性を改善し、人事交流を活発にするための方策としては次のようなものが考えられます。a) 他大学から転入する教員に対して住宅を貸与する、または住宅取得を補助するための「支度金」を支給する。b) 同じく研究費(例えば教授で5年間にわたり総額2,000万円程度)を支給する。
3、教育・研究活動を活発にする方策としては、次のようなものが考えられます。a)サバティカル(註8)制度を設ける。b) 教官一人当たりの旅費を年間20万円程度に増額する(註9)。c) 発表論文をレフェリー付きのプロシーディングス(註10)として出版するような国際学会に出席・発表する場合には年2回を限度とし旅費を支給する。c)個人で使用できる図書費を年間20万円程度支給する。
4、若手の教育・研究者の人事交流を活発にする方途としては、ポストドクター制度を充実させ、ポストドクターの地位を比較的安定的なものにすることが考えられます。例えば、a) 毎年の採用数がAcademic post(大学や研究機関の職のこと)の年間需要以上とする。b) 任期付きであることを考慮して、その給費は同一年齢の学卒者の平均給与の2倍程度とする。c) 任期は3年とし、8年まで再任可能とし、かつ再任率が9割以上とする。d) 全定員の7割以上についてはその採用権を大学や研究機関に与える。
5、現在の助手は漸次講師に振り替え、それに伴って助手のポストは全廃する。また、以後の講師採用の際の資格としては5年以上のポストドクターの経験を原則とする。
6、学問の自由を標榜する以上、大学にはそれに伴う自己責任が要求されます。大学としては当面次の諸点を実行すべきです。a) 大学はその活動を自己評価し、それを社会に対して公表すると共に、それに対する社会からの批判を仰ぐ。b) 教育・研究業績の合理的な評価制度を早急に確立し、教育・研究活動の活性化を促す(註11)。c)学内の諸機関は権威主義的運営がなされていないかどうかについて常に自己点検をする。d) 人事についてはプライバシーの許す範囲で最大限の情報公開を学内外に対して行う。

後註----------------------------
(1)一部のマスコミなどには、次のような戯画化された大学教授像に基づいた大学批判が見受けられます。すなわち、「学問的業績が殆どなくともトコロテン式に教授になることができ、教授となれば講義は十年一日の如く講義ノートを読み上げるだけでよく、講義の日だけ出勤するかあるいは逆に学内の権力闘争に毎日明け暮れていればよい」とした内容です。しかしながら、教授を含む大多数の大学教員は、毎日遅くまで仕事をし、あるいは仕事を家に持ち帰り、土曜日は勿論のこと時々は日曜日や祝日も出勤しています。事実これだけ仕事をしなければ、教育・研究の義務を満足に果たすことはできないし、(助教授及び助手の場合は)昇格することも困難です。ここで、大学教員には超過勤務手当が一切支給されないことも付言いたします。
(2)40~50代の教員の中には、他大学から昇格人事の話を持ち込まれながらも、これらの事情により二の足を踏んだ経験が一度や二度ある人はそれほど珍しくはありません。
(3)米国では、マッカーシズムの反省の上で教員の終身雇用制(tenure 制度)が一般化した歴史があります。(4)例えば、学会に於ける権威主義の弊害については、最近の薬事行政に於ける不祥事にも露呈されています。
(5)昇格や研究費獲得で有利になることを目的として教育・研究者間に業績競争が生じますが、特に数量化された部分での業績競争において抜きん出ようとする行動は業績主義と呼ばれます。平たく言えば点数稼ぎのことです。業績主義は学問の正しい発展に種々の弊害をもたらします。このような傾向は米国で顕著ですが、近年我が国でも目立つようになってきました。教育業績は研究業績より一層数量化が困難ですので、業績主義が高じると教育が著しくおろそかにされます。
(6)ある法律が制定された場合の効果とその法律の立法の意図とは必ずしも一致しないことは、米国に於ける禁酒法の歴史を持ち出すまでも無く、法律学の常識と言えましょう。
(7)ポストドクター制度(post doctoral fellowship)とは、博士の学位を持つ若手研究者に対して期間(2~3年)を定めて給費を与え、大学や国公立研究機関で研究に従事させる制度のことです。
(8)サバティカル(sabbatical)とは、大学教員に対して7年毎に
半年または1年間の有給休暇を与え、その期間休息したり国内外の大学を訪問・滞在(研究のため)したりすることを可能とする制度です。研究・充電休暇とも訳されます。
(9)現在東北大学では教官一人当たりの旅費は年間6万円程度ですから、3泊4日の東京での学会に一回出席しただけで無くなってしまいます。これでは、大学外との研究交流は自腹を切らない限り不可能です(但し文部省の科学研究費が支給されている場合は除く)。
(10)国際会議の後で刊行される発表論文集はプロシーディングス(proceedings)と呼ばれます。プロシーディングスは多くの場合学術雑誌の特別号として刊行され、掲載論文は通常号の論文と同様にレフェリーの査読が要求されます。
(11)教育・研究についての業績が奮わない教員に対して適切な処置をとることを含みます。


Posted by 管理者 : 掲載日時 1997年03月06日 12:51 | コメント (0) | トラックバック (0)
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