(国)弘前大
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2004年06月09日

大学病院も競争の時代、弘前大・兼子医学部長に聞く――企業並み効率運営必要

日経産業新聞(2004/06/09)

 今春の独立行政法人化で、国公立の大学病院が大きく変わろうとしている。弘前大学医学部は昨年春、国公立大で初めて医局を廃止。教授の任期制や評価制も導入し、他大学に先駆けて病院改革を進めている。兼子直医学部長は「民間企業のように、大学病院も淘汰(とうた)の時代が来る」という。同部長に改革の狙いや方向性を聞いた。
 ――弘前大は医局廃止に踏み切ったが、東北の一部地方では医師派遣が少なくなり、不満が上がっている。
 「これも改革の痛みだ。昨年春に医局を廃止。各教授単位で地方の病院に医師を派遣していた仕組みを改め、医師紹介の窓口を一本化、学部長の下に委員会を設けた。公正で客観的な立場から派遣の有無を判断、医師の希望も最大限尊重した。その結果、医師の派遣数は減った」
 ――このままでは過疎地の病院は存続が難しくなる。
 「大学病院も民間企業並みの効率的な事業運営が必要。小規模な自治体病院がある程度、統廃合されるのは仕方がないと思う。大半の自治体病院は赤字、医師も少なく、先端医療を担えない。赤字病院は以前のように黙認してはもらえない」
 「一方で交通事情の改善で通院圏内が広がっている。そこで私は、複数の病院を統合して各地域ごとに中核病院をつくるべきだと青森県知事にも提言している。大学病院を中心に病院をネットワーク化すれば、コスト効果も高く先端医療の充実、医療事故の抑制、人材育成にもなる。効果的な医師派遣のため秋田大や岩手医科大との連携を強化する。大学間の覇権争いの時代は終わった」
 ――他の改革も次々断行している。
 「全国の国立大学に先駆けて七、八年前から改革に取り組んでいる。当時は田舎の大学だと言うこともあり眠っているような教授も少なくなかった。このままではダメだと若手は強い危機感を持った」
 「教授の任期制や実績の評価制、公募制などを導入した。教授は十年任期とし、実績を基に研究費などの傾斜配分を実施。企業で言う成果主義の導入だ。採用も全国公募制に改め、同大出身は半数に減った。九州や私大出身の教授もいる。実際の手術もチェック、実力本位で採用を決める」
 ――なぜ国立の大学病院が企業並みの改革を進めるのか。
 「我々は(東大などの)旧帝大のように人材も資産もない。自前で競争力を高めなくては生き残れない。うちの医学部生の七―八割は東京など他の都道府県出身者で、そもそも人材が流出しやすい。今春スタートした新研修医制度でも募集枠四十七人に二十二人しか埋まらなかった」
 「今春からの独立行政法人化で五、六年後には民間企業のようにつぶれる大学病院だって出てくるだろう。法人化で収入の六割は自己負担となり、国からの補助金分も年々減額する。地方の大学病院が毎年増収を維持するのは大変だ」
 ――競争力強化の新たな対策は。
 「診療の質向上が第一だ。教授陣は充実してきたが、新たな人材の育成が不可欠。研修医の受け皿として総合診療部を創設、七月から稼働する。救急部も拡充し、研修医向けの宿舎もつくる。小粒でも、きらっと光る大学病院を目指す」
記者の目
自治体の反発乗り越えメス
 弘前大学医学部は、東北地方では東北大に次ぐ名門。その組織をまとめる兼子医学部長は気さくな人柄で、ひたすら病院改革に汗をかく毎日だ。
 改革は、学内や地元の反発を招く。医局廃止に伴う医師派遣の減少は、各自治体から強い反発を受けた。医局は様々な問題点が指摘されるが、地方の隅々に医師を送るシステムの元締でもある。このため、医局廃止の必要性を感じてもメスを入れられないケースがほとんどだ。雪国の大学病院改革に全国の目が集まっている。

Posted by 管理者 : 掲載日時 2004年06月09日 12:06 | コメント (0) | トラックバック (0)
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