理化学研究所
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2001年12月26日

理研が新ルール策定、研究成果の帰属徹底管理-人材流動の必要条件に

日経産業新聞(2001/12/26)

 元研究者による遺伝子スパイ事件をきっかけに、理化学研究所が研究サンプルの取り扱いなどに関する研究者向けのルールを策定した。来年一月、実施に移す。学術研究で獲得した研究成果をいったいだれが管理するのか。人材が流動化し産学官の連携が加速する中、これまであいまいだった日本的慣習は抜本的に見直され、帰属を明確にする動きが大学や国の研究機関にも広がりそうだ。
 理研の新ルールは、研究活動を通じて開発した実験装置や新しい遺伝子サンプル、細胞株などはすべて理研に帰属させることにした。このため、ほかの研究機関へ移籍する際には、研究者が理研時代の研究試料を持ち出す場合、理研と移籍先との間で契約を交わさなければならない。
 逆に、新しく理研に採用された研究者が、これまで在籍していた研究機関から遺伝子サンプルなどを持ち込むには、前の所属組織のの取扱規則に沿った手続きを必ず踏む。規則がない場合でも、在籍していた機関から文書で承諾を得るように定めた。
 遺伝子スパイ事件の起訴状によると理研の元研究者は、米国から移籍するときに研究サンプルを無断で理研に持ち込んだとされる。事前にきちんと契約さえ交わしておけば、事件へと発展せずに済んだ可能性が高い。帰属の徹底管理に踏み込む背景には、移籍時のルールを軽視していたとの反省が理研にあるからだ。
米国の事例参考に
 理研は、在籍する研究者約二千四百人のうち八割強を三―七年の任期制で採用している。研究者の移籍は企業や大学と比べても盛んで、研究プロジェクトごとに人が入れ替わるのは日常茶飯事。にもかかわらず研究室が保有する試料については、各研究室の管理に任せきりで、所有権がだれにあるのか明確にしていなかった。
 国立大学や政府系の研究機関の場合、理研と同様に実験データや試料について研究者個人の判断にゆだねているケースがほとんどとみられる。
 内閣府は事件直後、六十二の独立行政法人や国立大などの研究機関を対象に、研究成果の帰属先に関する調査を実施した。「何らかの規定を設けている」とする回答は、研究データだと五機関、研究サンプルでは六機関とそれぞれ一割にも満たなかった。
 米国では一般に、研究成果は特許やデータ、サンプルまですべて研究機関に帰属させている。人材の移籍が激しい社会の中で研究の継続性を保つため、雇用時に所属機関と研究者との間で成果の譲渡契約を結ぶのが普通だ。理研も今回のルール策定では「米国立衛生研究所(NIH)やマサチューセッツ工科大(MIT)が採用している規則を参考にした」と明かす。
各機関に普及へ
 研究者にとって極めて重要な実験データや研究サンプルに対し、米国流の厳格なルールを浸透させることは、研究者の交流や人材の流動化にとって阻害要因になるのではと心配する声もある。しかし、東京大学医科学研究所の新井賢一所長は「むしろ逆だ」と指摘する。学術界でもきちんとしたルールを整備することで「研究者の自由は守られ、産業界との交流にも弾みがつく」(新井所長)と強調する。
 米国の研究機関は、研究サンプルやデータの外部利用を制限しているようにみえるが、実際そうしているケースは少ない。「利用目的は研究に限り商業利用しない」や「許可なく第三者に移転しない」などの条件をきちんと守れば、通常開放している。理研も一月以降、手続きをきちんと踏めば研究データなどの移転は従来通りに促していく。
 研究開発型の各特殊法人は、独立行政法人へと移行することが決まった。国立大も二〇〇三年度をメドに独法化する予定だ。国の研究機関といえども自主運営が求められる。総合科学技術会議も、研究成果の取り扱いに関するルールの策定を今後、各機関に促していく構えだ。

Posted by 管理者 : 掲載日時 2001年12月26日 18:04 | コメント (0) | トラックバック (0)
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