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2006年07月14日

横浜市立大学教員組合、昇任人事に関する声明

横浜市立大学教員組合
 ∟●昇任人事に関する声明

 横浜市立大学の対応は,現行労基法の規定との関連において問題があると思われる。下記はいわば常識に属する事柄であるが,若干敷衍しておこう。

有期労働契約に関する現行労基法の趣旨と規定について

(1)現在期間の定めのない契約を結んでいる労働者を,有期労働契約に切り替えることは可能であるのか?

 以下の場合にのみ可能である。
 1.定年を迎えた労働者を再雇用する場合
 2.本人との間に合意があった場合

 それ以外について,期間の定めのない労働契約を締結していた労働者を有期労働契約に切り替えることは許されない。
 また,これまで新規採用者について期間の定めのない契約の労働者として採用した方針を,有期契約労働者のみ採用する方針に変更するなど、有期労働契約を期間の定めのない労働契約の代替として利用することは、法改正の趣旨に反し許されない。

 因みに,厚生労働省『早わかり改正労働基準法 決定版』労務行政(2003年10月23日)によれば,ご丁寧にも次のようなQ&Aが明示されている。
Q 今回の有期労働契約の見直しについての改正に伴い,現在,期間の定めのない労働契約を締結している労働者について,3年間の有期労働契約に変更することが可能でしょうか?」
A 労働契約の変更に際しては,労使当事者間の合意が必要ですので,少なくとも,使用者側の一方的な意思表示により,現在の期間の定めのない労働契約を有期労働契約に変更することはできません。
 このため,労働契約の変更について,まずは,労働者の意思を確認した上で,本人の同意を得るといった手続きが必要でしょう。」(30ページ)

(2)「本人との間の合意」により有期労働契約を結んだ場合,必要な手続きは何か?

 この点について,以下の労基法第14条2項に基づき定められた「有期労働契約の締結、 更新及び雇止めに関する基準」を遵守することが求められる。

現行労基法第14条2項

「厚生労働大臣は、期間の定めのある労働契約の締結時及び当該労働契約の期間の満了時において労働者と使用者との間に紛争が生ずることを未然に防止するため、使用者が講ずべき労働契約の期間の満了に係る通知に関する事項その他必要な事項についての基準を定めることができる。」


    ↓
有期労働契約の締結、 更新及び雇止めに関する基準
(「雇止めに関する基準」告示)
(平成15年10月22日・平成15年厚生労働省告示第357号)

(契約締結時の明示事項等)
第1条 使用者は,期間の定めのある労働契約(以下「有期労働契約」という。)の締結に際し,労働者に対して,当該契約の期間の満了後における当該契約に係る更新の有無を明示しなければならない。
2 前項の場合において,使用者が当該契約を更新する場合がある旨明示したときは,使用者は,労働者に対して当該契約を更新する場合又はしない場合の判断の基準を明示しなければならない。
3 使用者は,有期労働契約の締結後に前2項に規定する事項に関して変更する場合には,当該契約を締結した労働者に対して,速やかにその内容を明示しなければならない。

(3)有期労働契約を更新する場合又はしない場合の判断基準の明示とは具体的にどのような内容か。

 厚生労働省労働基準局編『改正新版 労働基準法(上)』労務行政(2005年3月3日)によれば,一般企業の場合,「契約期間満了時の業務量により判断する」「労働者の勤務成績,態度により判断する」「労働者の能力により判断する」「会社の経営状態により判断する」「従事している業務の進捗状況により判断する」等を例示としてあげている。
 なお,これらの事項は,「トラブルを未然に防止する観点から,使用者は労働者に対して書面を交付することにより明示されることが望ましい」とされている。

 労基法第14条の規定に基づき全教員の「任期制」導入を図ろうとする横浜市立大学は,これまで期間の定めを持たない教員に対して,昇任審査を通過していても,新たな有期労働契約に同意しない限り法人として発令しないという対応をとっている。いうならば,本人の自由意思であるべき労働契約の締結に際して,身分・待遇・労働条件の不利益を無期限に余儀なくさせるとともに,昇任と引き替えに有期労働契約への「合意」を強要しており,違法である。

 また,本人との間で有期労働契約の合意を取り付けた場合においても,当該契約を更新するか否かの具体的判断基準を本人宛明示していない限り,「雇止めに関する基準」告示に反している(「雇止めに関する基準」は行政指導の根拠とするものであり,使用者がこれに違反した場合,法律上何らかの効力が発生するというものでは残念ながらないらしい。ただし,大学に対して労基署からの行政指導が入る余地はある)。

昇任人事に関する声明

横浜市立大学教員組合
2006年7月12日

 公立大学法人横浜市立大学当局は、2006年6月27日に昇任予定者に対して労働契約書を示し、 6月30日までに署名押印して提出するよう求めた。このプロセスを実際に体験した組合員からの声は「組合週報」(6月30日)に掲載したところであり、そこには当局の不誠実な対応ぶりが如実に示されている。

 当組合が確認した情報によれば、今回の昇進予定者のうち2割を超える教員が、昇任の条件として任期制を受け入れることはできないことを主な理由として、契約書への署名押印を拒否した。ただし、これにより今回の審査過程で承認された昇進資格は消滅することなく、無期限に留保されていることが4月末の団体交渉における当局答弁で確認されている。当組合は、任期制を拒否した先生方と連帯して、任期制受け入れを条件とせずに昇進させるよう当局に求める原則的立場を貫いてゆく所存である。

 任期制に同意して昇進人事を受け入れた先生方については、労働契約書には「任期5年(再任あり)」と記されているのみで、再任条件に関する記載はなく、口頭での説明もなされなかった。これは、再任条件の明示を義務づけている任期つき労働契約締結に関する法的要件を欠くものであり、当局の示した契約書は違法性の高いものである。団交等の場における当組合の追求に対して、当局はこれまで「普通にやっていれば再任される」という発言を繰り返すばかりで、「普通」の定義については一切説明してこなかった。このような態度は法が禁じる不誠実対応そのものであり、この状況を放置すれば、5年後の再任審査の時点で教員側にとって不利な事態を招く恐れが強い。当組合は組合員一人ひとりの選択を尊重しつつ、どのような場合にも組合員の側に立ち、組合員の権利擁護の戦いに継続的に取り組んでいく。以上、声明する。

以上


投稿者 jinkenyogo : 2006年07月14日 00:01

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