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2006年02月14日

横浜市立大学、昇任規程の問題点

『カメリア通信』第37号
大学改革日誌(永岑三千輝氏)
 ∟●最新日誌(2月13日)

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横浜市立大学の未来を考える
『カメリア通信』第37号
2006年2月12日(不定期刊メールマガジン)
Camellia News No. 37, by the Committee for Concerned YCU Scholars
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昇任規程の問題点

横浜市立大学研究院
教授  一楽重雄

 12月20日に施行されたという「公立大学法人横浜市立大学昇任規程」が、2月に入って明らかになった。明らかになったと言うより、この規程とその内規によって実際に昇任のプロセスが始まっている。教員全体に周知することもせず、管理職が該当すると思われる教員ひとりひとりを呼び出し、「推薦するから書類を書くように、締切りは来週の月曜日」と言っているような状態である。しかも、管理職によって内規を示す場合示さない場合とそのやり方にも差がある。

 想像するに当局の言い分は、「昇任は、もう一年近く待たせているのだから4月にはぜひとも発令したい」ということであろう。しかし、一年も遅らせたのは誰なのか。当該教員には、何の責めもない。しかも、12月20日施行と言うのに、なぜ、一月以上も経った2月になるまで明らかにされなかったのか。一月も空白期間をおきながら、2,3日で書類を調えろということは、あまりにご都合主義ではないだろうか。

 この規程は、教授資格、準教授資格を定めたものであり、大学にとって大変重要なものである。したがって、学校教育法によって教授会で審議すべきものであることは、明白であろう。改革と言いさえすれば、法律を無視してもよいというわけはない。大学の自治は、憲法で定めている学問の自由を保障するものとして重要な法律的概念であり、現在も守らなければならないことには誰も議論の余地がない。問題であったのは、大学の自治という美名のもとに、教授たちは己の利益を守るためにのみ腐心し、大学の問題点を放置し、改革を怠ってきたのではないか、ということであった。仮に、この指摘が当たっていたとしても、大学の自治を守らなくてよいということにはならない。

 だからこそ、松浦副理事長も、法人化するに当たっての教員への説明会で「今後は大学の自治を尊重する」と明言したのであった。この言葉に期待をしていた多くの教員は、今回の昇任規程を見て、裏切られた思いでいっぱいであろう。

 せめて、規程の中味が納得のいくものであれば、「結果よし」としよう、ということもあるかも知れない。が、今回の規程は中味も大問題である。 第一に、昇任人事発令のために「新しい契約」を必要とすることを明記したこと。これは、任期制への同意を強制していることである。もちろん、これも法律違反の可能性が高い。本人の同意なしに期限なしから期限つきの労働契約に変更することはできない。

 市会での委員会質疑において「任期つきの教員は、任期なしの教員とは、待遇に差をつけるべきではないか」とか「学生が任期のある教員とそうでない教員を分かるようにしたら」というような意見があった。これらに対して、当局は、ほとんど積極的な回答を与えることが出来なかった。それは、「全員任期制」という制度設計自身が間違っていたからである。まず、「全員任期制」が法律に違反している可能性が高い。少なくとも法律の趣旨に反していることは、労働基準法が改正されたときの付帯決議で明らかである。いわゆる大学教員の任期法によって任期のあるポストを大学の一部に作るのであれば、任期のある教員をいかように優遇することも出来た。しかし、全員任期制では、制度として一つであって、制度上は任期なしの教員は存在しない。たまたま、任期つきに切り替えることに同意しない教員がいるだけである。また、同意しないことは、法律上の権利であるから同意しないからと言って差別をすることも出来ない。結局、任期のある教員を優遇することは出来ない。

 現実には、この制度はよい教員を追い出す作用しか持たない。教員の流出は相変わらず、止むところを知らない。テレビで中田市長自らが取材したA教授はこの4月から転出する。

 規程の問題は、任期制にとどまらない。管理職の推薦がない限り審査の対象ともならないことも大問題である。この問題点は、教員説明会において指摘したのだが改善されていない。しかも、管理職が選挙で選ばれたわけではないから「あんな管理職に推薦されたくない」という人が出ることも十分考えられる。専門分野が異なれば、仕事の評価はおろか内容の理解さえできないのが、学者の世界である。自分の仕事が分かるはずもない人に推薦してもらうのもおかしなことである。

 昇任の資格として「ふさわしい研究業績」に並んで「本学に対して多大な貢献をした者」という一項が入っている。これは、大学の自殺行為である。本学に対して多大な貢献をした人に対しては、その貢献の種類に応じたしかるべき待遇をするべきであって、「ふさわしい研究業績がない」人を教授や準教授にすることは、学生や社会を欺くことにほかならない。今でさえ「学務教授」という教授でない「教授」を作ってしまった。今後は、教授でない「教授」が出現する。

 学長・理事長は、新大学を本当によいものとする気持ちを持っているのであれば、今回の昇任規程をいさぎよく撤廃し、真によい大学を作るために新しい規程を早急に教授会の審議を経て決定すべきである。

 今年も入試志願者は、3371名にとどまり、平成16年度の4654人にはとうてい及ばない。市民にとって価値がある大学に改革されたならば、当然志願者も大幅増のはずである。大学改革の図面をひいた人は責任を取るべきである。仮に「大学改革はうまく言っている、このままでよい」ということであるとするなら、改革の図面を引いた本人が、表に出てリーダーシップを発揮すべきである。批判を恐れ、隠れたところで欠陥図面を出し続けるならば、これは構造計算偽造と同種の犯罪行為である。


投稿者 jinkenyogo : 2006年02月14日 00:19

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