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2005年01月06日

横浜市立大「無抵抗な家畜の群れ」化へのマニュアル:横浜市当局、勤務条件・任期制等について提示

学問の自由と大学の自治の危機問題(佐藤真彦教授)
∟●「無抵抗な家畜の群れ」化へのマニュアル: 横浜市当局、勤務条件・任期制等について提示(2005/01/05)

「無抵抗な家畜の群れ」化へのマニュアル: 横浜市当局、勤務条件・任期制等について提示

横浜市当局は,昨年末の12月28日に,教員組合に対して勤務条件・任期制等についての文書を提示した(下記のpdfファイル1~7[1]を参照)[2].一読して明らかなように,教員評価制度と連動した,全教員に対する任期制と年俸制を強制することで,行政の意を汲んだ教員の協力のもとに,市当局が教員を徹底管理することを第一目的としたマニュアルとなっている.すなわち,伊豆利彦本学名誉教授がいみじくも指摘された,教員を「無抵抗な家畜の群れ」[3]化するためのマニュアルである.

これで,中田宏市長,池田輝政総務部長(現泉区長),および,橋爪大三郎「あり方懇」座長(東工大教授)の連携プレーによる無法・違法の大学破壊のためのシナリオ[4][5]が,現大学事務局官僚の手によって,細部の詰めに至るまで仕上げられたことになる.

それにしても,教授会そのものを消滅させた上に,人事権のみならず教員の身分保障を剥奪する等の暴挙が,さしたる抵抗もなくすんなりと通って,中田市長と横浜市官僚にとっては,おそらく拍子抜けものの,予想をはるかに超えた“大戦果”だったのではないだろうか.下記に,2年前の「池田暴言」[6]のさわりをあげておくので,このことを確認されたい.

小川恵一学長を筆頭とする“すり寄り派”教員の積極的加担,および,一般教員の過剰な臆病と鈍感がなかったなら,これほどスムーズにことが運ばなかっただろうことは,間違いない.

ごくごく近い将来に,行政に対する批判はおろか,同僚教員,とくに,従来のような民主的選挙を経ずに上意下達で任命された幹部教員の学説やその指導学生の研究内容に対しても,学位審査会等において,まともにコメントすることすら憚られるという,甚だ好ましくない雰囲気が到来するだろう.これを,“学問の死”と呼ばずに何と呼ぶのか[7].うのき氏の痛烈な指摘を待つまでもなく,批判精神が消滅し,保身と打算の奴隷精神が蔓延するであろうそのような大学に,何の価値があると言うのか[8].

伊豆氏は叫ぶ.「大学問題を言論思想の自由に対する破壊の問題としてとらえる必要がある。そして、それはファシズムの支配、戦争国家への道なのだ。・・・いまの日本は民主主義の国だという。笑うべき幻想だ。すでに日本は戦争に踏み込んでいる。いま、私たちはどのようにして、それとたたかうことができるか。・・・」


文中にある注は「続きを読む」に掲載

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[1]
教員組合からのpdfファイル
1.「公立大学横浜市立大学職員の勤務条件(教員)」
http://satou-labo.sci.yokohama-cu.ac.jp/041228-1 Jouken.pdf
2.「就業規則の概要」
http://satou-labo.sci.yokohama-cu.ac.jp/041228-2 Shuugyou.pdf
3.「別紙1 教員の給与制度について」
http://satou-labo.sci.yokohama-cu.ac.jp/041228-3 Besshi1.pdf
4.「別紙2 教員の任期制について」
http://satou-labo.sci.yokohama-cu.ac.jp/041228-4 Besshi2.pdf
5.「別紙3 教員評価制度について」
http://satou-labo.sci.yokohama-cu.ac.jp/041228-5 Besshi3.pdf
6.「教員評価実施マニュアル」
http://satou-labo.sci.yokohama-cu.ac.jp/041228-6 Manual.pdf
7.「各種シート」
http://satou-labo.sci.yokohama-cu.ac.jp/041228-7 Sheets.pdf

[2]
横浜市立大、新たな教員人事制度の構築に向けた取り組み04-12-30
http://satou-labo.sci.yokohama-cu.ac.jp/041230katayama-ycu.htm
http://university.main.jp/blog2/archives/2004/12/post_306.html

「公立大学法人横浜市立大学職員の勤務条件(教員)」(2004年12月28日付文書)の問題点 永岑三千輝氏『大学改革日誌』2005年1月4日付05-1-4
http://satou-labo.sci.yokohama-cu.ac.jp/050104nagamine.htm
http://eba-www.yokohama-cu.ac.jp/~kogiseminagamine/SaishinNisshi.htm

横浜市立大の全教員任期制、「恐るべき法解釈」「一般民間企業で全社員を有期契約にしている事例はあるのか」05-1-5
http://satou-labo.sci.yokohama-cu.ac.jp/050105katayama-nagamine.htm
http://university.main.jp/blog2/archives/2005/01/post_325.html

[3]
日本はどこへ行くのか 04-12-26
http://satou-labo.sci.yokohama-cu.ac.jp/041226izu.htm 
・・・横浜市大を訪れて、そこに私は廃墟を見た。いまの学生や教授に無抵抗な家畜の群れを見た。学問に理解のない市長とその手下に見事に料理された情けない廃墟を見た。そして、それは我が日本国の運命なのだと思った。日本はどこへ行くのか。・・・

[4]
学問の自由と大学の自治の敵,橋爪大三郎「あり方懇」座長の危険性02-12-11
http://satou-labo.sci.yokohama-cu.ac.jp/page033.html 
・・・したがって,橋爪氏(および「あり方懇」を主導している横浜市大事務局)は,まさに,"学問の自由と大学の自治(および民主主義)の敵(破壊者)"であると断じざるをえない.・・・橋爪大三郎氏および横浜市大事務局の圧力に抗して,また,独立行政法人化・民営化の潮流に飲み込まれることなく,家永三郎氏が身をもって示したように,また,ウォルフレン氏の言うように,"荒野に呼ばわる少数者の声"を上げる"勇気"が,われわれ教員のひとりひとりに求められていると思う.・・・

[5]
『自作自演の茶番劇』:03/12/01横浜市が”大学側”改革案の全面的受け入れを表明03-12-04
http://satou-labo.sci.yokohama-cu.ac.jp/031204chaban.htm
・・・ “コワモテ”で鳴る石原慎太郎知事による,東京都立4大学に対する有無を言わさぬ強権的な“改革”(大学解体・破壊)に比べると,“市民派”中田市長のソフトさ・寛容ぶりが際だっているように見えるが,この横浜市大改革も,その実態は,都立4大学の場合と同様の,凄まじい大学解体・破壊であり,市長と市大事務局が主導した“自作自演の茶番劇”であることが,その経緯を見れば歴然となる.・・・

[6]
『部外秘資料』が語る,横浜市立大学の"独裁官僚"と似非民主制03-1-28
http://satou-labo.sci.yokohama-cu.ac.jp/page036.html 
・教員は商品だ.商品が運営に口だして,商品の一部を運営のために時間を割くことは果たして教員のため,大学のためになるのか.
・教員はだれにも管理されていない.自己管理だから問題なのだ.国立は教員評価がはじまった.評価が一番低い教員はクビになることだってある.
・改善するためには,現在の人事制度を全面否定して,ゼロから立ち上げるしかない.発議権は現場に与えられたとしても,最終決定は全学的制度の下で決定すべきである.
・人事を誰が握るかですべてが決まる.私立の理事会のように,決めたものを拒否できるシステムを作るべきであろう.
・大学教員はパーマネントで,教員を管理している人が誰もいない.そういうものを作らない限り,よくやっている人が馬鹿を見ることにもなると思う.
・横浜市から金をもらってこの大学が成り立っているという意識がない.喩えて言うならば,生んでくれた親に何をしてあげられるのか.大学が持つ資源で地域に何が出来るのかを考えなければならない.
・教授会がごちゃごちゃいわなければ,すんなり決まる.その辺をはっきりするということだ.
・教員は現実は違うのに自身をスーパーマンだと思っている.なんでも出来ると思っている.そこに事務が配転してくればやる気がなくなる.
・教員は横浜市に雇われているという意識がない.設置者がつくった制度を知らないで議論している.権限の構造がどうなっているかを教員は知らなければいけない.
・教員は自分の役割をはっきり認識していない.制度の上にたった自覚がない.何でも出来ると思っている.事務局の責任も8割はあると思う.うるさい集団に対して面倒くさい,やめようと思って,力を発揮していない.
・大学人の自由でありたいという願望があるわけだが,そのことと教員ひとりひとりがどういうふうに今の制度を認識しているかということの差の現れだと思う.市大の教員になった時に,公立大学であるということ,だからこういうルールがあるのだということを知らしめないといけない.
[7]
阿部泰隆(神戸大学):「大学教員任期制法の濫用から学問の自由を守るための法解釈、法政策論―京都大学井上事件をふまえて」+『追記』04-3-28
http://satou-labo.sci.yokohama-cu.ac.jp/040328abe.htm 
・・・任期制は多数派による少数派弾圧手段 任期制は、身分保障に安住した怠慢な教員を追い出し、大学を活性化する手段だ等と思っている人が多いが、実は逆で、任期制法が適用されると、失職か再任かを決めるのは、当該大学(教授会、あるいは理事会)である以上は、怠慢な教員が追い出されるのではなく、学内派閥の少数派は、どんなに業績を上げても、追い出されやすい。多数派の身分が保障され、少数派の身分が害されるだけである。そこで、多数派に隷従するか、むしろ、自ら多数派になるしか、学内では生きることができない。同じ大学で、競争講座をおいて、あえて学説の対立を現出することによって、学問の進展を図ることなど、およそ夢の又夢になる。これでは、教員の学問の自由が侵害され、大学が沈滞することは必然である。したがって、教授の任期制を導入するまともな国はない。任期制が一般的な韓国でも、それは副教授以下に限っているから、日本のしくみは国際的にも異常である。私は、これまで幾多の闘争をしてきた。それは学問を発展させたと信じているが、それが可能となっているのは、わが同僚からは追放されない保障があるからである。もし同僚と意見が合わないと、追放されるリスクがあれば、私は「毒にも薬にもならないお勉強」をするに止めたであろう。・・・

[8]
「自治」以前の問題としてへの返信(2004.12.28)04-12-28
http://satou-labo.sci.yokohama-cu.ac.jp/041228izu-unoki.htm  
・・・市大の大学人のほんの一握りの誠意ある非常勤の先生方とごく一部の真面目な学部生をのぞきましては、「何ごとにも優先すべき事項」とは「自分」であると思われます。このような市大が市民からの信用回復を得るには・・・市大にいる大学人自身が、いま「何ごとにも優先すべき事項」を考え直す必要があるのではないでしょうか。・・・


投稿者 jinkenyogo : 2005年01月06日 01:55

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