« 2003年11月 | メイン | 2004年02月 »

2003年12月
掲載事項(記事)一覧


2003年12月22日

教員任期制 大学研究の活性化は疑問 私の視点

『朝日新聞』2003年12月22日付

神戸大学大学院法学研究科教授 阿部 泰隆

  大学教員任期法が制定されて6年になる。国公私立すべての大学において、教授を含めた大学教員に任期制を導入して、教員の入れ替えを進め、大学などへの多様な人材の受け入れを図るものである。立法者はこれによって、相互の学問的交流が不断に行われ、教育研究が活性化することを期待した。

 そうした効果には疑問が多く、大学ごとの選択制であるため、これまではあまり活用されてこなかった。しかし、来年4月の国立大学法人化を控え、大学改革の一環として導入の動きが強まっている。

 確かに、満足な研究、教育をせずに同じ大学に定年までとどまる教員の対策は必要であろうが、任期制はふさわしくない。

 学問を発展させ、それを学生に教えるという大学教員の任務は、一般社会とは異なり、同僚の学問とも対決することによって初めて可能になる。それなのに教員に任期を付し、再任審査をするのは同僚の教授会である。任期制は、結局は、多数派に属さない教員を追い出すことに使われやすいだろう。

 京都大学再生医科学研究所で任期付きの教授が、外部評価委員会で高く評価され全会一致、再任賛成とされたのに、協議員会(教授会に相当)で再任を拒否され、今年5月、任期満了で「失職」に追い込まれた。研究所内規では、再任の判断は外部評価に「基づく」となっているのに、「基づかない」理由は不明のままである。京都地裁は執行停止(仮の救済)の申し立てを、任期満了による失職にすぎないとして却下した。

 こうした状況の下で、再任を望めば、同僚と分野の重なる研究を避け、人間関係を良好に保つことに専念するしかない。教育研究の活性化というこの法律の目的とは逆になり、憲法が保障する学問の自由も死んでしまう。

 大学教授には身分保障を与えるのが世界の常識である。少なくとも、再任を拒否される教授には事前の聴聞と司法審査の機会が与えられるべきである。再任審査は前記の京大の例では、文部科学省令に基づく学則と研究所内規によって行われた。再任申請者には、これらのルールに従って合理的な判断を求める権利がある。合理的理由のない再任拒否は、実質、免職処分といえる。従って、司法救済は不可欠である。

 司法救済が未整備のまま、任期制を導入すべきではない。任期制が適用できるのは、任期法の上からも新たに職に就ける場合とされ、研究助手や期限付きのプロジェクト参加者、「多様な人材の確保が特に求められる教育研究組織の職」(流動化型)に限定されている。全学的に任期制を導入することは違法と思う。

 日本の大学教員は国際的に比較すると流動性に乏しい。このことが任期制導入の根拠になっているが、日本の社会の中で大学ほど熾烈に引き抜き合戦をしている業界はない。また、任期制を導入しても、同じ学閥内での入れ替えにとどまるなら意味はない。

 人事流動化のためには、任期制よりも新規採用時に他大学出身者の割合を高めるよう各大学に目標値を設定させる方が効果的だ。怠慢な教員対策としては学生による評価や研究評価を行い、優秀な教員に対しては欧米のようにスカウトマネー付きで誘致合戦ができるようにする方が、教育研究の活性化につながろう。


Posted by 管理者 : 掲載日時 2003年12月22日 13:36 | コメント (0) | トラックバック (0)
URL : http://labor.main.jp/blog/archives/2003/12/post_102.html