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2003年07月
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2003年07月21日

第2部流動する頭脳(4)問われる教官評価――身内への甘さ、命取りに(大学革新)

日本経済新聞(2003/07/21)

 本格的な大学間競争時代に突入し、優秀な研究者をどう確保するかが、各大学の腕の見せどころとなる。教官の任期制など人材の流動化策を、教官への厳正な評価とともに実施する体制が問われることになる。
 教授の報酬は一律千百万円。ただし年一回の評価で五十万円ずつ増減します――。六年前「公設民営」型で開学した高知工科大学は、十六日の理事会で全教官を対象に年俸・任期制導入を決めた。各教官の合意を取り付けたうえで新制度への移行を目指す。
 年齢でなく実力で金額が変動する年俸制は大学の人事制度としては珍しい。岡村甫学長は「二年前に始まった独自の教員評価システムがあったから実現できた」という。
 同大の教官は毎年三月上旬に「成績表」を受け取る。一年間の授業評価や研究業績を「教育」「研究」「(産学連携などの)社会貢献」の三分野、約十五項目別に独自の計算式に当てはめ数値化したものだ。例えば一教科百人を相手に一年間講義し学生から平均的な評価をもらうと八十点、欧米有力誌に論文一本載ると百五十点、特許を取ると百点となっている。
 昨年の全教官の平均点は九百六十四点。三百点台から千六百点までの幅があった。年俸制に切り替わればこの評価が収入にはね返る。同時に任期制も導入、教授といえども昇格後五年間の任期中平均千百点を維持しないと定年まで勤める権利が得られない。
 「大学から見ると、評価は教官との約束ごとがどの程度実行できているかを判断するためにある」と岡村学長は話す。新制度だと若手でも実力があれば収入が増える。歴史の浅い大学には人材確保の武器にもなる。
 岐阜薬科大学は一九九八年度、教授以下約四十人の全教官対象に一律五年の任期制を導入した。今年三月、初の審査で助教授と講師各一人を再任しないと決めた。外部評価委員会が大学側の提出した資料をもとに「研究職を継続することは難しい」と判断した。
 この二人の教官は、教授会の協議で語学や基礎科学など教育専門の講師として処遇する。永井博弌学長は「評価の目的はふるい落とすことではない。教官のやる気を引き出し、大学の活性化につなげたい」と言う。
 人材流動化で導入する大学が増える任期制だが、高知工科大や岐阜薬科大のように評価を厳格に適用する例は少ない。「教官の将来を考えると、結局、全員再任となる」(ある国立大学長)というところがまだ多い。
 文部科学省が実施した二〇〇二年度研究活動の実態調査で研究者らに任期制の問題点を聞いたところ、四人に一人が「公正でオープンな評価が行われていない」と回答した。評価の妥当性確保は大きな課題だ。
 個々の教官でなく大学自体も、評価の波にさらされる。国立大は来年四月の法人化で六年間の中期目標・計画をベースに国の評価を受けることになった。結果次第で、国からの予算が増減する。大学の質を高め「点数」を上げるためには、身内への手ぬるい評価は命取りにもなりかねない。
 お茶の水女子大学は今年三月に大学評価・学位授与機構が実施した評価で、産学連携など「社会との連携」の項目で五段階で下から二番目のランクだった。本田和子学長は「モノ作りに貢献しないと大学の役割を果たしていないというのか」と不満を隠さない。
 産学連携の機運の中で、産業界との協力を推進する大学への評価が高まる傾向がある。基礎研究への強みなど大学の多様性を生かしつつ、どう学内を活性化するか。各大学の模索が始まった。


Posted by 管理者 : 掲載日時 2003年07月21日 17:18 | コメント (0) | トラックバック (0)
URL : http://labor.main.jp/blog/archives/2003/07/post.html

第2部流動する頭脳(4)問われる教官評価――身内への甘さ、命取りに(大学革新)

日本経済新聞(2003/07/21)

 本格的な大学間競争時代に突入し、優秀な研究者をどう確保するかが、各大学の腕の見せどころとなる。教官の任期制など人材の流動化策を、教官への厳正な評価とともに実施する体制が問われることになる。
 教授の報酬は一律千百万円。ただし年一回の評価で五十万円ずつ増減します――。六年前「公設民営」型で開学した高知工科大学は、十六日の理事会で全教官を対象に年俸・任期制導入を決めた。各教官の合意を取り付けたうえで新制度への移行を目指す。
 年齢でなく実力で金額が変動する年俸制は大学の人事制度としては珍しい。岡村甫学長は「二年前に始まった独自の教員評価システムがあったから実現できた」という。
 同大の教官は毎年三月上旬に「成績表」を受け取る。一年間の授業評価や研究業績を「教育」「研究」「(産学連携などの)社会貢献」の三分野、約十五項目別に独自の計算式に当てはめ数値化したものだ。例えば一教科百人を相手に一年間講義し学生から平均的な評価をもらうと八十点、欧米有力誌に論文一本載ると百五十点、特許を取ると百点となっている。
 昨年の全教官の平均点は九百六十四点。三百点台から千六百点までの幅があった。年俸制に切り替わればこの評価が収入にはね返る。同時に任期制も導入、教授といえども昇格後五年間の任期中平均千百点を維持しないと定年まで勤める権利が得られない。
 「大学から見ると、評価は教官との約束ごとがどの程度実行できているかを判断するためにある」と岡村学長は話す。新制度だと若手でも実力があれば収入が増える。歴史の浅い大学には人材確保の武器にもなる。

 岐阜薬科大学は一九九八年度、教授以下約四十人の全教官対象に一律五年の任期制を導入した。今年三月、初の審査で助教授と講師各一人を再任しないと決めた。外部評価委員会が大学側の提出した資料をもとに「研究職を継続することは難しい」と判断した。
 この二人の教官は、教授会の協議で語学や基礎科学など教育専門の講師として処遇する。永井博弌学長は「評価の目的はふるい落とすことではない。教官のやる気を引き出し、大学の活性化につなげたい」と言う。
 人材流動化で導入する大学が増える任期制だが、高知工科大や岐阜薬科大のように評価を厳格に適用する例は少ない。「教官の将来を考えると、結局、全員再任となる」(ある国立大学長)というところがまだ多い。
 文部科学省が実施した二〇〇二年度研究活動の実態調査で研究者らに任期制の問題点を聞いたところ、四人に一人が「公正でオープンな評価が行われていない」と回答した。評価の妥当性確保は大きな課題だ。
 個々の教官でなく大学自体も、評価の波にさらされる。国立大は来年四月の法人化で六年間の中期目標・計画をベースに国の評価を受けることになった。結果次第で、国からの予算が増減する。大学の質を高め「点数」を上げるためには、身内への手ぬるい評価は命取りにもなりかねない。
 お茶の水女子大学は今年三月に大学評価・学位授与機構が実施した評価で、産学連携など「社会との連携」の項目で五段階で下から二番目のランクだった。本田和子学長は「モノ作りに貢献しないと大学の役割を果たしていないというのか」と不満を隠さない。
 産学連携の機運の中で、産業界との協力を推進する大学への評価が高まる傾向がある。基礎研究への強みなど大学の多様性を生かしつつ、どう学内を活性化するか。各大学の模索が始まった。


Posted by 管理者 : 掲載日時 2003年07月21日 10:24 | コメント (0) | トラックバック (0)
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2003年07月04日

まなび スケッチブック 第3部 先生の通知票(4)再任拒否 不明確な評価の基準

京都新聞(2003/07/04)

まなび スケッチブック 第3部 先生の通知票(4)
再任拒否 
不明確な評価の基準
 京都市左京区の京都大再生医科学研究所で今年五月、一人の教授の名前が案内板や郵便受けから消えた。五年間の任期で教授を務めていた井上一知氏(五八)が再任を拒否されたためだ。
 井上氏は一九九八年五月、研究所の「器官形成応用講座」の教授となった。任期が切れるのを前に昨年四月、研究所に再任を申請した。
 「研究所内の教育上、運営上、数々の貢献が見られる」「社会に再生医療を啓もう、認識させた業績は極めて高く評価される」
■投票で反対の結論
 再任申請を受け、研究所が依頼した外部評価委員会は、井上氏の業績を高く評価した。糖尿病治療のための膵(すい)島細胞移植の実験を、世界に先駆けて動物レベルで成功させた研究や、日本再生医療学会の設立に加わって初代会長を務めたことを反映した内容だった。所外の専門家七人でつくる同委は全員一致で再任に賛成し、昨年九月、研究所に伝えた。
 しかし三カ月後、井上氏は研究所長の名前で意外な通知を受け取った。「再任を否決した」
 研究所の教授二十一人でつくる協議員会は、外部評価委員会の報告と正反対の結論を出した。採決は井上氏が退席したうえで無記名の投票で行われた。
 井上氏は三月、再任拒否は手続きが不透明で不当として、取り消しを求めて京都地裁に提訴した。失職後も無給で講座の研究者十六人を指導する日々が続く。再任拒否の理由について研究所は「裁判のなかで明らかにする」とし、対外的にはいまも明確な説明はない。
 全国の大学で、教授らの雇用期間を区切って採用する任期制が急速に広がっている。教員が他の大学へ異動しやすくすることで、大学の教育や研究を活性化する狙いだ。自校出身者を重用し、終身雇用することが当たり前だった日本の大学のあり方を、抜本的に変えたいとの思惑が文部科学省にはある。
 文科省によると、全国の国公私立大の任期制教員は、九八年にはわずか三十人程度だったのに対し、現在は約三千人にのぼる。京大の場合は新設ポストから制度を導入しているが、弘前大医学部や東北大医学研究科は今年から、すべての教員を対象にした。
■任期法に規定なく
 ところが、大学教員任期法には再任についての規定は一切なく、手続きは各大学に任されているのが現状だ。岐阜薬科大は再任の基準として「任期中に専門誌に論文が掲載される」「研究費の外部調達の比率を向上させる」「社会的な貢献」などを掲げる。これらに基づいた審査で昨年度末、二人の研究者を再任不可とし、助教授から講師へ格下げした。しかし、このように目標を明らかにする大学は少数派だ。
 神戸大の阿部泰隆教授(行政法)は「大学での研究、教育の業績を評価する基準が明確でなく、手続きに透明性を確保する規定や、異議申し立ての保障もない」と指摘。「任期制は学問的発展に役立つより先に、大学教員の勢力争いの道具に使われるだけではないか。公正な評価システムがなければ、任期制は機能しない」と警鐘を鳴らす。

Posted by 管理者 : 掲載日時 2003年07月04日 10:25 | コメント (0) | トラックバック (0)
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