« 2003年05月 | メイン | 2003年07月 »

2003年06月
掲載事項(記事)一覧


2003年06月30日

第2部流動する頭脳(2)生え抜き主義に決別――教員、実力重視で選抜(大学革新)

日本経済新聞(2003/06/30)

 JR九州小倉駅から電車とタクシーで四十分の北九州学術研究都市。早稲田大学が大学院、情報生産システム研究科を四月に開校した。教員を早大出身者で固める生え抜き主義と決別。「入学式で校歌の『都の西北』を歌えない人が大勢いた」と同研究科委員長の秋月影雄教授は話す。
 招へいした三十人の教授らはNTT、シャープなど企業出身者が約半数。中国人や韓国人も加わる。学生も三分の一は韓国、中国などから来た。アジアの生産技術研究拠点にするという。
 ニューロコンピューターが専門で中国から日本に帰化した古月敬之・助教授は「北九州は有力企業も多い。産学連携で理論と実践を極めたい」と意欲的だ。
 同研究科の設立を決めたのは改革を掲げて一九九四年から八年間総長を務めた奥島孝康教授。当時、新たな教授は主に内部から誕生。「教育も研究もぬるま湯だった」。改革を進め専任教員のうち非早大出身者の割合は三〇%弱から四〇%まで増加。研究科設立は改革の総仕上げの一つだ。
 早大より先に改革を始めた慶応義塾大学は専任教員に占める外部出身者が四七%。九〇年代にインターネット教育などに先べんをつけた。安西祐一郎塾長は早大の改革について「今後成果が出てくる」とみる。
 生え抜き主義の打破、人材流動性の確保は有力国立大でも求められている。九州大学は四月、工学系の大学院、学部を中心に教員任期制を導入した。来年四月の法人化を控え、村上敬宣大学院工学研究院長は「特徴を出さないと予算すら確保できなくなる」と語る。研究・教育の活性化には任期制に基づく評価が不可欠だ。
 しかし現実は厳しい。東京工業大学は来年四月から、教授への任用の要件として一定期間の学外経験を求めるが、教授候補の助教授らが「国内は雇用の流動性が乏しい」と反発するのを恐れ、対象を助手に限った。
 学内の抵抗を受けるのは東京大学も同じ。三日に東大先端科学技術研究センターが開いた大学改革に関するシンポジウム。東大幹部が「先端研は出島」などとあいさつ。その後に講演した先端研のトップ、南谷崇教授が「出島や特区ではない」とかみついた。先端研は任期制や産学連携を進めている。南谷教授は幹部のあいさつに「先端研以外を巻き込むな」との意識を感じた。
 先端研は東大が実施した定年延長を「若手の芽をつむ」と反対してきた。任期制や定年延長の導入で、佐々木毅学長は「多様な雇用形態を実現している」というが、定年延長の背景には現役教授陣の「保身」という本音が透けて見える。
 尾身幸次・前科学技術担当相は「生え抜き主義では競争が働かなくなる」と語る。大学が技術革新の推進役を担うには時間がかかりそうだ。

Posted by 管理者 : 掲載日時 2003年06月30日 17:25 | コメント (0) | トラックバック (0)
URL : http://labor.main.jp/blog/archives/2003/06/post_1.html