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2001年03月
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2001年03月02日

東大定年延長その後…、教授も“就職難”、任期制は難航-ブランド力低下背景に

日本経済新聞(2001/03/02)

 東京大学(蓮實重彦学長)が教員の定年を六十歳から六十五歳に段階的に引き上げることを決めてから半年。定年延長はすんなり実現したものの、これとセットになるはずだった任期制の導入がなかなか進まない。定年延長だけが「先食い」されかねない状況だが、背景には退官後の他大学への再就職率が低下するなど、教官が真剣に将来設計を考えなければならなくなってきたという事情があるようだ。
 全部で十三ある東大の研究科(学部)のうち、これまでに全教員への任期制導入を決めたのは工学、農学生命科学、医学の三つ。人文社会、経済学は助手のみで導入、法学や総合文化(教養)などは未定という。
 昨年九月に定年延長を決めた東大の評議会が「(反対は)皆無に近かった」(蓮實学長)というのとは対照的。任期制の導入の是非や具体的な内容は各研究科の判断に任せていることもあり、足並みが乱れている。
 「定年延長と任期制導入は別々の問題」(大塚柳太郎東大広報委員長)というのが東大の公式な立場だ。任期制は本来、研究者の業績を厳しく評価して有能な人材を残そうという狙いで、若手教官も対象になる。ただ人事の停滞を心配する学内の声に配慮する形で任期制が位置づけられているのが実態だ。
 任期制の導入を決めた工学系研究科(工学部)の場合は、五十六歳以降も大学に残るには教授会の審査を必要とするとしており、定年延長を強く意識した内容。しかしこうした場合でさえ「本人が大学に残りたいと強く希望した場合、同僚が拒否するというのは日本の社会では事実上無理」(関係者)との見方もある。
 定年延長がすんなりと実現した背景には、教官が再就職する際の東大教授のブランドがかつての神通力を失ったという現実がある。
 これまでは六十歳で定年退官したあと私大などに移って七十歳前後まで勤めるというのが一つのパターンだった。だが私大も経営改善のため定年年齢を引き下げるところが目立つようになったうえ、母校出身者や企業経験者を教授に迎えるケースが増えた。かつてはほぼ全員が可能だった再就職の割合が六―七割に落ちた研究科もあるという。
 米国の大学では他大学の出身者を積極的に教員に採用する傾向があるが、東大では教員の八割以上を出身者が占める研究科もあるという。東京大学理学部長をつとめた電気通信大学の益田隆司教授は「人材の流動性がもともと低いのが問題」と指摘する。早期退職制度もないため、満額で四千万円近い退職金が数年の差で一千万円以上違ってくる。「こうした制度上の不備を放置して定年だけを延長するのは問題」(益田教授)とみる。
 国立大の定年は「大学がそれぞれ決める」(文部省人事課)のが原則。約百ある国立大学の三分の二は定年六十五歳で、残りも大半は六十三歳。六十歳だったのは東大と東京工業大だけで、東工大もこのほど六十五歳への延長を決めた。六十三歳制の大学も両大学に追随するとみられる。
 民間企業では従業員が自らの定年延長を決められるという話はあまり聞かないが、それができるのも株主や経営者のいない国立大学特有の現象と言えそうだ。

Posted by 管理者 : 掲載日時 2001年03月02日 18:15 | コメント (0) | トラックバック (0)
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