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1997年06月
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1997年06月20日

東京都立大学・短期大学教職員組合、大学教員任期制法の採決強行に抗議する[声明]

1997年6月20日
東京都立大学・短期大学教職員組合
教員任期制法制化に反対する都立大学教職員の会

[1]「大学教員等の任期に関する法律案」は、6月6日参議院本会議において、日本共産党、新社会党などの反対、自民党、社民党、さきがけ、平成会(新進党・公明)、民主党・新緑風会などの賛成多数で可決、成立した。広範な大学関係者からつよい疑義、危惧・批判や反対の声があがるなか、徹底した慎重審議が求められていたにもかかわらず、このような重要法案をめぐって、衆参両院の委員会審議あわせて五日間というあまりにも短時間の日程で審議が打ち切られ採決が強行されたことにたいして、私たちは憤りをもって抗議するものである。

[2]短い審議のなかでも、山積する重大な問題点が浮き彫りになってきている。 法律では、数年の「期間の満了により退職」(第2条)と定めている。任期満了時点で新たな職が得られない場合教員は失職することになり、またその際に国公立大教員は、失業保険すら支払われないきわめて身分不安定な状態においやられるのであって、かねてより懸念されていたとおり「教員解雇法」としての危険な本質が明かになっている。これが実施されるなら、わが国の大学教育と学問研究に重大な種々の否定的影響をもたらすことが憂慮される。
 第一には、独創的、基礎的研究の衰退が危惧される。多くの教員が任期満了時の業績審査にむけて短期間に成果や評価の得やすい研究にはしる傾向が生じるため、長期的視野にたって学術文化の発展に寄与することの期待される、独創的な研究の育成や基礎的、基幹的分野の研究が停滞する恐れがおおきい。
 第二には、学生教育への犠牲の転嫁である。学生・大学院生の在籍年数とほぼ同じ任期で教員が大学を入れ替わる状況のもとでは、教育や課外活動での系統だった責任ある指導態勢をとることは困難となり、教育現場に混乱や質的低下が引き起こされるのは必至である。また、再任、採用の審査にむけた就職活動のため、教員が契約期間の後半になると研究にも教育にも身が入らなくなることは、近年のイギリスの経験が示すところであり、教育の空洞化が進行することは目にみえている。
 第三には、学問研究の自由のなし崩しの恐れである。学問の自由および大学の自治が教員の身分保障と不可分にむすびついていることは、わが国戦前の軍国主義下での惨苦の経験や戦後アメリカのマッカーシズムからの痛切な教訓である。数年で身分を失う任期制のもとでは、教員は、再任、採用の審査に通るために、学問的識見・良心に基づいた自由で批判的な社会的発言や行動をさしひかえて自己規制をしいられる傾向が助長されるであろう。学問の自由が萎縮させられるもとで、真に自主的で創造的な研究教育活動の活性化は望みえない。
 第四には、現存の研究条件の改善や格差是正なしには、人事の流動化によって研究の活性化を期待することはできない。わが国の大学教員の職場異動が鈍いのは、旧帝大を頂点とした大学間の極端な序列化と格差に、また民間研究機関と比べた研究条件の貧困に起因する。これらの現状を放置したままの任期制の強行は、ひと握りの有力大学や海外への頭脳流出を促して格差の拡大固定化と学界における優秀な人材確保の困難とを招来するだけであって、わが国の大学諸機関のポテンシャルの低下と空洞化を引き起こすことは必至であろう。また、選択的導入の場合、受け入れる大学と受け入れない大学や教員との間に、新たな差別・選別や行政指導・財政誘導の余地を残して、いっそうの格差増大に帰結することが危ぶまれよう。
 第五には、わが国労働者全体の「雇用リストラ」に連動する危険性である。法律が、教育基本法や教員公務員特例法などでうたわれている大学教員の身分保障と抵触することは多々指摘されている。特別立法による強行的着手の企ては、財界の求める雇用の「規制緩和」を推進する突破口となって、公務員ひいては労働者全般にわたる、終身雇用に代わっていつでも解雇自由な「有期雇用」の労働市場の形成に道を開くものであろう。財界の「二十一世紀戦略」の意向に沿った新たな大学支配の抜本的強化を狙ったものにほかならず、国民のための教育研究の発展を希求する立場にとって、由々しき動向といわざるをえない。

[3]私たちは、政府文部省が大学審議会答申を受けて今国会での法案成立を期する意向を固めて以降、学内外で全力をあげて任期制法制化反対の運動に取り組んできた。学内では、「教員任期制法制化に反対する都立大学教職員の会」を発足させて、2月には法制化反対の学習決起集会、法案上程後の4月には法案学習と抗議集会をひらき、それぞれ決議を採択して関係者へ訴え、反対署名を展開した。学外では、2月7日に結成された東京共闘会議に呼びかけ団体、代表幹事として参加し、都大教および東京共闘会議を軸とした大規模な反対署名、氏名公表ポスター、都労連・単組への働きかけ、春闘メーデー集会での街頭宣伝、数次にわたる文部省前行動、国会請願・傍聴行動など精力的に取り組んだ。
[4]「オール与党」体制の翼賛的な国会運営のもとで、法案成立の阻止ができなかったことはまことに遺憾であった。とはいえ、広範な国民各層を巻き込んだ近来にない大規模な反対運動の結果、私たちの実状に即した道理ある指摘や批判の声は、両院の委員会審議での各党委員による「懸念」表明や質疑応答に種々反映し、また、「付帯決議」の採択に結実させることができた。今後の法律施行の際には、これら運動の成果と教訓を貴重な足掛りにして、導入反対や厳しい監視等の取り組みをつよめていくことが必要である。
 私たちは、大学に働く教員職員のみならず、国民各層とともに、任期制法とそれに含まれた危険な企図の実現を許さず、学問の自由および教育研究の真の活性化を追求するために、また労働者の働く諸権利を守るために、ひきつづき諸課題の取り組みに全力を傾注する決意であることをここに表明する。


Posted by 管理者 : 掲載日時 1997年06月20日 14:01 | コメント (0) | トラックバック (0)
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